2022年04月07日
【経営】「Invent & Wander ジェフ・ベゾス Collected Writings」ジェフ・ベゾスさん
P226
株主への手紙
2016年 二日目をかわす
(前略)
高速で意思決定を行う
二日目の企業も質の高い意思決定を行っています。ですが、意思決定の質は高くても、スピードが遅いのです。はじまりの日の熱量と活気を維持するには、質の高い意思決定を素早く行わなければなりません。スタートアップにとっては簡単なことですが、大企業にとってはこれが難しいのです。
アマゾンの経営陣は素早い意思決定を鉄則にしています。ビジネスはスピードが命。それに意思決定が素早い職場は、楽しいのです。私たちにも正解がすべてわかっているわけではありませんが、意思決定のコツをここに紹介しておきましょう。
一つ目は、硬直的な意思決定のプロセスは厳禁ということです。多くの決定は取り消せますし、もとに戻すことが可能です。こうした意思決定は簡単なプロセスでいいのです。
(中略)
二つ目は、たいていの意思決定は、ほしいと思う情報の70パーセント程度しか手に入らない時点で下さなければならないということです。90パーセントの情報が手に入るまで待っていたら、だいたい遅いのです。
(中略)
三つ目は、「反対してもコミットする」を合言葉にすることです。そうすれば、たくさんの時間を節約できます。みんなが賛成してくれなくても、自分の提案に自信があれば、こう言えばいいのです。「みんな、反対意見があるのはわかるけど、ここは僕に賭けてくれませんか?反対でもコミットしてもらえませんか?」。話がここまで来ているときは、おそらく正解は誰にもわからなくなっているはずなので、みんなもすぐに賛成してくれるでしょう。
これは下から上の場合だけではありません。上司もこの言葉を実行するべきです。私もしょっちゅう「反対してもコミット」しています。
このあいだ、アマゾン・スタジオのあるオリジナルコンテンツの制作を許可しました。私は自分の見方をチームに伝えました。中身が十分に面白いか疑問だし制作が複雑だ、契約条件もあまりよくない、ほかにもっといい機会があるのではないかと意見したのです。
チームは私の意見と正反対で、制作を望んでいました。私はすぐに返信しました。「反対するがコミットするよ。史上最高に人気のあるコンテンツになるといいね」
もし私を説得しなければならないとしたら、意思決定がななり遅れていたはずです。ですが、反対でも支えることにすれば、時間の節約になるのです。
ちなみに誤解しないでいただきたいのは、私は頭の中で「あいつらは間違っていてよくわかっていないが、あまり追い詰めても無駄だ」と思っていたわけではありません。ただお互いの意見が違っていただけで、私は正直に自分の意見を言い、彼らに私の意見を考える機会を与えたうえで、彼らのやり方を心から支えるとすぐに伝えたのです。
このチームがこれまでに11回のエミー賞、6度のゴールデングローブ賞、3度のアカデミー賞に輝いていることを考えると、私は話し合いに入れてもらっただけでもありがたいと思っています。
四つ目は、考えの本質的な違いを早めに認識し、すぐに上にあげて処理することです。チームの中で目的が違い、根本的なものの見方が食い違うことはあります。メンバーが同じ方向を向いていないのです。どれほど話し合っても、会議を何度重ねても、深い考え方の違いは解決できません。上の人間が処理しなければ、話し合いが果てしなく続いてみんなヘトヘトになります。誰であれいちばん体力のある者が決断をすることになってしまいます。
(中略)
「疲れ果てたからもう終わり」というのは意思決定において最悪のパターンです。判断が遅くなり、気力も削がれます。ならば、早い段階尾で解決を上に任せるべきです。
(後略)
意思決定、挙句、取組着手を高速化すべく「反対してもコミットする」。
私は本件にアマゾンの競合優位の源泉を一つ垣間見ると共に、サラリーマン時代、敬愛する上司(S氏)に通底すること言われたのを思い出した。
当時、私はS氏から全幅の信頼を得ていたが、得ていたがゆえホウレンソウを絶やさなかった。
そんなある日、懸案だった某スーパーでの出張展示会が具体化し、先方との条件交渉の進捗を彼にホウレンソウしたのだが、途中で遮られ、こう言われた。
「予算から全てお前に任せているんだから、いちいち全部報告しなくて良い。お前がそれで良いと思うなら、そうすれば良い。じゃ、ワシは(今日は)もう(家に)帰る」(と言って社長室を出た)
結局のところ、面倒な話は部下に丸投げし、早く帰りたいだけじゃないか。
直後私はこう思った(憤慨した?・笑)が、少し経ってから思い直すに部下冥利のあり難い話であり、また、改めて今思い直すに「反対してもコミットする」と同義である。
なぜなら、予め出張展示会の根本的な意義とコンセプトがシェアされ、あとはそれらをどう投資対効果良く具現化するだけの、(現場責任者である)私の専門(&得意)領域の、話だからである。
周知の通り、アマゾンは年々倍々ゲームである。
そんなアマゾンが「反対してもコミットする」を合言葉にし続けられるのは、アマゾンの根本的な価値(観)と存在意義、ビジョン、コンセプトが再認識&シェア&コミットされる社内機会が講じられていることに加え、Amazon Career Choice等、「その道、かつ、その道が好きで好きで堪らないプロ(中のプロ)」のみ現場配備される仕組みが実装されている所以ではないか。
kimio_memo at 07:11│Comments(0)│
│書籍