2018年10月24日
【健康/医学】「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」津川友介さん
P50
食事と体重の関係
本書では、健康的な食事とは「病気になりにくく長生きできる食事」であると定義した。これは多くの人が食事を考える時に、病気になりたくないと思っているのではないかと筆者が考えたからである。しかし、若者の中にはダイエットのために食事を変えたいと思っている人もいるだろう。そういう人たちにとっては、病気にならないことよりも、見た目がスリムになることの方が優先順位が高いかもしれない。巷には「ダイエットに効く食事」に関する情報もあふれかえっている。しかし、これらのほとんどは科学的根拠にもとづかない、個人の経験談が元になっている。ここでは、科学の世界で「やせる食事」に関して何がわかっているのか説明する。
日本では「糖質制限ダイエット」が流行っている。「炭水化物さえ減らせば良い」というのはシンプルで魅力的な方法であるものの、実は糖質制限ダイエットは必ずしもやせる食事ではない。炭水化物の中にも、「太る炭水化物」と「やせる炭水化物」があるからである。
カロリーの摂取量よりも、食品の内容の方が重要
ハーバード公衆衛生大学院の研究者たちは、食事でダイエットしている人たちがカロリーにばかり注目していることに警鐘を鳴らしている。最新の研究によると、ダイエットにとって摂取カロリーの「量」と同じくらい重要なのは、その「質」であるという。つまり、重要なのは、何キロカロリー摂取するかだけでなく、それをどのような食品でとるかだ、ということである。
食事は大きく分けて、たんぱく質、炭水化物(糖質)、脂質の3つに分けられる。たんぱく質と炭水化物は1gあたり4キロカロリーであるのに対して、脂質は1gあたり9キロカロリーもある。脂質の方が同じ重さでも2倍以上カロリーが高いので、ダイエットのために摂取カロリーを減らそうと思ったら脂質の量を減らすのが一見合理的であるように思える。この考えを元に、昔は食事の中の脂質の量を減らす(低脂質食)ことでダイエットができるのではないかと考えられており、実際にそのようなダイエットが行われていた時代がある。
しかしながら、被験者を低脂肪食と高脂肪食に無作為に割り付けたランダム化比較試験の結果、低脂肪食を食べていた人も、高脂肪食を食べていた人も体重の変化に差がないことが明らかになった。低脂肪食は必ずしも「やせる食事」ではなかったのだ。
やせる炭水化物?
最近になって、食事の中の炭水化物の量を減らすことでやせることができるのではないかと言われるようになってきた。1972年にアメリカ人医師のロバート・アトキンスが著書Diet Revolutionの中で提唱したため、「アトキンスダイエット」などとも呼ばれる。「糖質制限ダイエット」、「低炭水化物ダイエット」、「ケトン式ダイエット」という名前で呼ばれることもある。これらのダイエット法は、程度の差こそあれ、いずれも炭水化物の量を減らすことでやせようというものである。では食事の中の炭水化物の量を減らしたら、本当にやせることができるのだろうか。
実は「炭水化物を減らせばやせる」という考え方は正確ではない。確かに単純に炭水化物の摂取量が多い人と少ない人を比較したら、炭水化物の摂取量が少ない人の方が体重が減っていることはランダム化比較試験で報告されている。しかし、重要なのは炭水化物の量ではなく、どのような炭水化物を摂取するかであるということは、あまり認識されていない。つまり、白米やラーメンのように精製された炭水化物(白い炭水化物)は体重増加につながるものの、玄米や蕎麦のように精製されていない炭水化物(茶色い炭水化物)を食べても体重は増えないことが研究結果から示唆されている。
では具体的に食事内容と体重変化の関係を見てみよう。
2011年にハーバード大学の研究者らが、アメリカ人約12万人を12-20年間追跡して、食事内容が体重にどのような影響を与えるかを調査した結果研究がある。これを見ると、白い炭水化物を食べている人は体重が増加しているのに対して、茶色い炭水化物を食べている人では体重が減っていることがわかる。
フライドポテトを食べる人は太っている
じゃがいも、加糖飲料(糖分を含む炭酸飲料など。ここではダイエットコーラなどの無糖のものは含まない)、赤い肉、フルーツジュースなどをとっていた人ほど体重が増えていたことがわかる。逆に、野菜や果物、ヨーグルトを食べていた人は体重が減っていた。
それでは、バナナやリンゴなどのいわゆる「糖質の多い果物」はどうだろうか。実は、果物の種類と体重変化との関係は別の研究で検証されており、バナナやリンゴの摂取量が多い人ほどむしろ体重が減っていたことがわかっている。種類にかかわらず果物の多くはダイエットによいと考えてもよいだろう。
注意が必要なのは、これは観察研究の結果であるので、因果関係があるかどうかは明らかではないということである。この研究は、食事内容がどれだけ変化したか(減ったか増えたか)と、体重がどのように変化したかの間の関係性を調べた研究である。つまり、正確には、これらを食べると体重が減る(もしくは増える)とは言えず、体重が減った(増えた)人はこれらの食品の摂取量が多くなっていたということまでしか言えない。しかし、それにしても白い炭水化物と茶色い炭水化物とでは体重変化との関係が真逆であったというのは重要な知見である。
ランダム化比較試験では何がわかっているのだろうか?例えば、ナッツに関しては、複数のランダム化比較試験が行われており、ナッツを食べたグループは食べていないグループと比べて、どちらかというと体重が減る傾向にあったものの、2つの集団の間には大きな差は認められなかった。このように高カロリーであるナッツを食べても太らない(どちらかというとやせる傾向にある)ことは言うことができるが、ナッツを食べることでやせることができるかどうかはまだ断定的なことは言えない。
炭水化物を減らした分、何を食べるか
同じ1gあたり4キロカロリーの炭水化物であっても、白米を食べていた人ほど太っており、玄米を食べていた人ほどやせていた。同じカロリーであっても、フルーツジュースを飲んでいた人ほど太っていたが、(加工していない)果物を食べていた人ほどやせていた。これらからも、摂取しているカロリーの「量」よりも、何でそのカロリーを摂取しているか、つまりカロリーの「質」の方が重要なのだと理解してもらえると思う。
巷で流行っている糖質制限食の最大の問題点は、炭水化物を減らした分、代わりに何を食べるかに関して、しばしば間違った指導が行われているということである。「炭水化物さえ減らせばステーキでも焼肉でも好きな物を食べても良い」とアドバイスされたならば、明らかにその食事療法は間違っているので、指導者を変えた方が良いかもしれない。なぜならば、赤い肉を食べている人ほど体重が増えていることがわかっているからである。さらには仮に肉を食べて体重を減らすことができたとしても、赤い肉をたくさん食べると、動脈硬化が進んで脳卒中になりやすくなったり、大腸がんのリスクを上げることになる。病気になってしまうリスクのある危険な食事なのである。病気のリスクを上げずにやせる方法があるのに、脳梗塞やがんになる可能性が高くなってまでやせたいと考える人は多くないだろう。
残念なことに、私の妻の胴回りは拡大の一途である。(涙)
「寄る年波には勝てない」と言えばそれまでだが、間近の夫からすると当たり前である。
というのも、妻は白米を食べるのは慎む(→挙句、最少量を食べる)一方、菓子や間食を取るのは慎まない(→挙句、開封即完食w)からである。
単に白米を食べる量を減らせば、当然満腹感や腹持ちは悪い。
そこで、それを癒やす(笑)べく、白米と変わらないか、白米より肥満に有効(笑)な菓子や間食につい手が伸びる、という話である。
津川友介さんがお考えの「糖質制限食の最大の問題点」は尤もであり、また、考えさせられる。
そうである。
単にこれまで当たり前に摂取していた糖質、炭水化物を量だけ減らしても、挙句、他の肥満に有効な成分を爆食い(笑)、爆摂取するだけである。
これは、企業が単に人や事業を所謂「リストラ」しても、挙句、残った人や事業へ業務プロセス的に、更には、経営的にしわ寄せが行くだけであるのと似ている。
人も企業も「システム」である。
全体最適を忘れた部分最適、局所対応の思考、解決策は、傷口を大きくし、更には、取り返しがつかなくなって当たり前である。
kimio_memo at 07:28│Comments(0)│
│書籍