2018年04月12日
【邦画】「わが青春に悔なし」(1946)
[ひと言感想]
理論の裏付けのない「美しい」、「楽しい」、「アブクみたいな」ものに心惹かれるのは、非現実で苦を伴わないからである。
苦は幸福、成功の要件でないが、苦の無い営みは余力があるのと、挙句、後悔の種を残すのと、同義である。
苦の回避は本能だが、後悔の到来は確率論である。
理論の裏付けのない「美しい」、「楽しい」、「アブクみたいな」ものに心惹かれるのは、非現実で苦を伴わないからである。
苦は幸福、成功の要件でないが、苦の無い営みは余力があるのと、挙句、後悔の種を残すのと、同義である。
苦の回避は本能だが、後悔の到来は確率論である。
【野毛(演:藤田進さん)】
日本の軍閥は財閥官僚の尻押して、満州を支那から分取り、半植民地化した。
また、国際連盟からおん出た。
つまり、国内的な矛盾を外国侵略で強引に解決しようという腹なんですよ。
問題はそこから出てるんだ。
【幸枝(演:原節子さん)】
野毛さんの話は、いつでも満州事変と軍閥、財閥なんだから。
左翼の人、あたし嫌い。
【野毛】
いつでもじゃありませんよ。
必然的な関連があるから言うんですよ。
つまり、外に侵略の野望を強行するために、国内の思想統一を図ろうという訳です。
【幸枝】
父は自由主義者です!
赤じゃありません!
【野毛】
侵略主義に反対な思想は、彼らには全て赤ですよ。
【幸枝】
父は絶対に正しいわ。
正しい者は最後には必ず勝つはずだわ。
【野毛】
お父さんも同じようなことを仰ってます。
それで、全教授の連袂辞職で文部省の反省を促すって言うんだが、文部大臣は財閥を背景に持つ大政党の領袖です。
いいですか。
それが軍閥と結託して強行する思想弾圧ですよ。
反省を促すなんて甘っちょろい考えでいたら・・・
【糸川(演:河野秋武さん)】
(無言)
【幸枝】
じゃあ、どうしたら良いって言うの?
【野毛】
だから、この事件は・・・この事件はですね・・・
軍閥の侵略主義の裏付けとして巻き起こされた事件なのだから、その侵略主義、軍国主義打倒の旗の下に闘われるべきだと言うんです。
なのに、いくら僕たちが口を酸っぱくして言っても、先生は聞いてくださらない。
まあ、見ててごらんなさい。
きっと大学側の敗北に終わります。
【幸枝】
まるで、父たちが負けるのが嬉しいみたいね、あなたは。
【野毛】
勝って欲しいから言ってるんですよ!
ただ、先生たちが事件の本質に目を覆って、甘っちょろい考えでおられる限り、きっと負けると言うんです。
【幸枝】
やめましょう、こんな退屈な話。
あたし、野毛さんが考えてるようにこの世の中は、そんな理屈ばかりでできてるとは思わないわ。
もっと美しいものだって、楽しいものだってあるはずだわ。
ねっ、ねえ、糸川さん、良いもの聴かせてあげましょう。
ねっ、ねっ、いらしゃい。
ねえ、いらっしゃい。
【糸川】
(幸枝に連れて行かれる)
【野毛】
それがあなたの欠点ですよ。
どうして人の言葉を素直に聞こうとしないのかな。
そのくせ、あなたの知ってる人生なんて、この窓から覗いた綺麗事ですよ。
おべんちゃらな学生たちに取り囲まれてね。
その鼻っぱりが一度ペチャンコにへし折られない限り、あなたには発展はないな。
あなたは「理屈、理屈」と言って、馬鹿にしてるけど、理論の裏付けのない美しいものだの、楽しいものだのって、そんなもの、アブクみたいなものですよ。
【幸枝】
(怒ってピアノを弾き始める)
●
【野毛の声】
顧みて悔いの無い生活。
【幸枝の父(八木原教授)の声】
自由の裏には、苦しい犠牲と責任のあることを忘れちゃいかん。
kimio_memo at 07:08│Comments(0)│
│映画