2017年02月15日
【経営】「わがセブン秘録」鈴木敏文さん
P171
第6章 ものごとの「本質」を見抜けば仕事はうまくいく
3 人は手段が目的化すると必要以上のことをやり始める
一台8000万円のATMはなぜ、2000万円で開発できたのか
自分たちのやるべきことの本質を自覚し、目指す目的とそれを実現するための手段が明確になると、本質的に必要なことだけに集中できるようになります。
典型がセブン銀行です。自前の銀行を持とうと考えたのは、主にセブンーイレブンの店舗にATMを設置することが目的であって、銀行を設立すること自体が目的ではありませんでした。
銀行設立の本質的な意味は、お客様にとっての金融面での利便性を格段に高めることにありました。
最初は自前の銀行設立ではなく、都銀各行と一緒にATM共同運用会社を設立する案も検討しました。しかし、共同運用方式では、ATMの設置店舗の選定や利用手数料の設定で主体性をとれず、お客様に提供する利便性を自分たちでコントロールしにくいところがあります。
それでは店舗にATMを設置するという目的はある程度実現できても、本質から外れることになります。そこで共同運用方式は断念し、自前で銀行免許を取得するという方法を選択したのです。
新銀行の設立については、金融業界の常識を破るような徹底したローコスト・オペレーション を追求しました。新型のATMも最低限必要な機能を見きわめ、不必要な要素はいっさい入れず、既存のATMの四分の一のコストで開発しました。
従来のATMは出入金取引、警備、システム監視、電話の四つの機能のために四回線を確保していましたが、これを一回線で一元的に管理する画期的な方式を開発するなど徹底したコスト削減を図りました。
コンピュータの運用をアウトソーシングしたのをはじめ、ATMへの現金の搬送・補充、点検業務も警備会社に委託しました。
画期的なローコスト・オペレーションが実現できたのも、銀行設立はお客様にとってのセブンーイレブンの利便性を高めるためにあるという本質から、けっして離れることがなかったからでした。
一方、本質から外れると、本来は目的を実現するための手段であったものが、いつのまにか目的化し、その結果、人間はやたらと必要以上のことをやり始めます。
もし、銀行をつくること自体が目的化していたら、まがりなりにも銀行である以上、あれもしなければいけない、これもできなければいけないと、既存の銀行のものまねを始め、きわめて高コストの体質になっていたことでしょう。
セブン銀行はその後、グループの店舗以外の商業施設や駅、空港など公共施設へのATM設置、訪日外国人旅行者のための海外発行カード対応サービス、主に在日外国人のための海外送金サービス、移動ATM車両の開発など、日本の銀行としては先進的な取り組みへと、業界に先駆けてサービスを拡大していきます。
これも、お客様にとっての利便性を高めるというセブン銀行の本質が明確であったからこその事業展開でした。
「人は、本質を見誤ると、手段を目的と勘違いし、必要以上に凝り出す」との、鈴木敏文さんの仰せは尤もだ。
東京都庁が天高くそびえ立っているのも、我々都民が役所の本質を見誤り、東京都の現預金とキャッシュフローが潤沢なのを良いことに、不要な建造(コスト)を看過したからだし、日本人の多くがメタボなのも、とりわけ我々中年男女が食事の本質を見誤り、小銭があるのを良いことに(笑)、不要なカロリーを食欲とストレスに任せて摂取しているからである。
なぜ、我々は本質を見誤り易いのか。
一つ言えるのは、本質は抽象的なのに対し、目的達成の手段は具体的だから、である。
もっと言えば、本質は直感的に理解し難いのに対し、手段は直感的に理解し易く、ひと目魅力的、脊髄反射的だから、である。
文明の進化の本質は、人間を楽にすること、である。
もっと言えば、人間から不満を奪うこと、不要化すること、ナンセンス化すること、である。
我々が本質を見誤り易いのは、メタボと同様、我慢のチカラとクセを失くした文明人の持病で、その根治はメタボ以上に(笑)、相当の目的・意識が別途必要である。
