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2015年06月26日

【経営/マーケティング】「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」ジョン・ムーアさん

P66
【9】強いブランドはブランドの「負債」より「資産」が多い。

(前略)

個人のバランスシートに資産と負債があるように、ブランドのバランスシートにもブランド資産、ブランド負債という形での資産と負債がある。
「ブランド資産」とは世間に対して評判やイメージを高める企業活動のことである。
「ブランド負債」とはブランドの評判やイメージを損なう活動のことである。

マーケティング活動には、プロモーション、後援、キャンペーン、特別イベントなどがある。企業の活動としてどれがふさわしいかを判断する場合、スターバックスのマーケティング部門では、まずその活動がフランド資産かブランド負債かを判断している


マーケティングプランの採否を決める4つのチェックポイント

1]スターバックスのお客様のインテリジェンス(知的好奇心や判断力)を尊重しているか
[2]お客様に約束した内容を企業として責任をもって果たすことができるか
[3]従業員が楽しんで積極的にできるものか
[4]気が利いていて、オリジナリティがあり、心から信頼できるものだとお客様が受け取ってくれるか

この4つのうち、3つ以上「イエス」がつけば、その活動はブランド資産になる。
一方、2つ以上に「ノー」がつけば、ブランド負債となってしまう。そうなったら、企業としてその活動を採用するか否かを議論する必要がある。


懸賞キャンペーンはブランドにとってプラスか、マイナスか

2003年初頭に初めての懸賞キャンペーンを行うことになったが、その前にマーケティング部門で、このキャネンペーンがブランドにとって資産となるか負債となるかを判断しなければならなかった。これは「ベスパUSA」(イタリアのオートバイメーカー「ベスパ」の米国代理店)と提携し、スターバックスのお客様にイタリア旅行や人気の高いベスパなど、さまざまな商品が当たるという特別なキャンペーンだった。

さきに紹介した4つの点で考慮した結果、3つがはっきりと「イエス」になったので、このキャンペーンはブランドにとって「資産」だと判断された。
お客様のインテリジェンスを尊重しているかという点については、イタリアのロマンティックなイメージを呼び起こすだけでなく、イタリアのカフェ文化に由来するスターバックスとも関連があるので、「イエス」と判断された。

(中略)

結果は成功だった。豪華な賞品でお客様を驚かせ、喜ばせただけでなく、販売も増加したので、大成功を収めたといえる。


クーポンの配布は「負債」

スターバックスがブランドにとって「負債」と見なすマーケティング活動のひとつは、クーポンである。

(中略)

スターバックスもクーポンを配布することはあるが、あくまでも慎重に検討したうえでのこと。少なくともこれまで、ダイレクトメールで大量にばらまくことは決して行ってない。それは、その行為はブランドにとって「資産」ではなく「負債」だと捉えているからである。

スターバックスのマーケティング担当者たちは、ダイレクトメールでクーポンを配布することは、お客様のインテリジェンスを尊重するものではないと考えている。それに、ダイレクトメールでクーポンが届いても、お客様の目には、”気が利いていて、オリジナリティがあり、心から信頼できるもの”とは映らないだろう。内部調査を行った結果でも、お客様はもっとオリジナリティに富んだものを期待し、一斉にダイレクトメールを発送するという集合的扱いではなく、個人として扱ってほしいと思っていることが判明した。
さらにいえば、そんなありきたりのマーケティング戦略を使わないと売上が伸ばせない企業なら、各店舗にいるバリスタの情熱が失せてしまう。

常連の『インテリジェンス(知的好奇心や判断力)』を尊重しているか?
なぜ、スターバックスはこの問いを販促(=マーケティングプロモーション)プランのチェックポイントに含めるのか。
一番の理由は、スターバックスの常連は「『インテリ』だから」であり、また、「『インテリ』であって欲しいから」、だろう。
よくファーストリテイリングの柳井正会長が「セールチラシは対象顧客へのラブレターである(がゆえ、彼らを真に惹ける内容に精緻に作り込む必要がある)」旨仰っているように、マーケティングは販促であれ商品開発であれ、対象顧客、それも、「(ずっと)居(続け)て欲しい」常連へのラブレターであって然るべきであり、「インテリ」宛のラブレターは、中身もその根本思想(=コンセプト)も「インテリ」でなければならない。

スターバックスのこの考えが私に改めて気づかせてくれたことは、「マーケティングで先ず重要なのは、[相思相愛かつ相互発展的関係性の構築]をコンセプトにできる『常連』と、コンセプトにできない『非常連』を各々明確に定義し、かつ、後者を実施対象から完全に除外すること」、だ。
ジョン・ムーアさんによれば、スターバックスの設立には、「[カフェインが摂取できる、単に習慣的に消費する熱い焦げ茶色の液体]ではなく、[微妙で深いエキゾチックな風味を持つ本物のコーヒー]を、居心地良く落ち着ける場所で日常的に提供したい」との思いが在ったようだが、そもそも「微妙で深いエキゾチックな風味」や自宅以外の「居心地良く落ち着ける場所」を評価、(商品)欲求する人は凡そインテリな人だ。
スターバックスは設立時に、インテリでない人を対象顧客から除外し、インテリな人を常連化することを自ら宿命付けたと言えよう。

スターバックスのこの自己宿命付け、並びに、彼らの持続的成功と真反対のテレビ局の失墜が私に改めて確信を促すことは、「マーケティングは、否、ビジネスは、インテリな人を対象顧客とし、彼らと相思相愛かつ相互発展的な関係性を持続的に構築するのが賢明だ」、ということだ。
サラ金を見れば分かり易いが、インテリでない人を常連化するビジネスは、やり方次第とはいえ、対象が対象なだけにやり易いと言えばやり易く、しかも、ボロい。(苦笑)
しかし反面、対象が対象なだけに相思相愛も、相互発展的な関係も長続きしないし、そもそもそうした関係性を構築することが本質的に困難だ。
事業運営するビジネスを、儲かりさえすれば対象顧客を人と思わない、不実で刹那的な焼畑農業のそれでよしと考えるか、それとも、「違いの分かる」インテリジェンスの持ち主と、面倒でも合理的かつ誠実に利益交換を試み続けてこそ本当と考えるか。
ビジネスの持続的な成功を決めるのは結局、経営者の信条、信念だ。



スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?
ジョン・ムーア
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2014-04-17






kimio_memo at 07:37│Comments(0) 書籍 

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