2014年11月13日
【将棋】「将棋世界2014年11月号/新しい将棋を創りたい」糸谷哲郎七段(第27期竜王戦挑戦者)
P7
ーー前期の竜王戦のランキング戦は2組から降級。今期は3組からリスタートでした。降級に関してはいかがでしたか?
「正直なところ、将棋が弱かったです。棋風改造をしておりうまくいってなかったこともありましたが、弱かったので降級は仕方ないと思いました」
(中略)
ーー棋風改造についてもう少しお聞かせください。対局中などに意識して指し口を変えるということですか?
「そうですね。時間の使い方や指し口、その辺りを意識して変えています」
ーー最も具体的に変えたのは?
「持ち時間の使い方ですね。以前は序盤を早く指すことが多かったのですが、いまは序盤から時間を投入するようになっているはずです」
(中略)
ーー糸谷さんが思う羽生名人の強さは?
「読みが深く、人が読んでいない手を読んでおられるところです。直感的な手を選択されることは少ないように感じるのですが、普通の棋士が読みを絞るところを、読みの範囲を狭めずに読まれているように感じます。深さ、広さ、正確性において他の棋士より優れておられ、結果、人より広い範囲で手を正確に読むことができているのではと思います」
(中略)
ーー将棋の勉強というと、糸谷さんはどういったことが中心になりますか?
「研究会に、あとは序盤の見直しが主になります。(羽生善治名人との)挑(戦者)決(定戦)の間はあまり将棋を指さなかったですね。自分の思考と向き合い直すことが中心でした」
ーー「自分の思考」とは、序盤の見直しということでしょうか?
「はい、そうです」
ーー先ほど出た棋風改造の中で、勉強法も変えられたのでしょうか?
「あまりないのですが、とにかく考えることですね。それは将棋だけじゃなく、何でもいいのです。イベントのことを考えたり、社会問題だったりでも」
ーー考えることによってどういった効果が得られますか?
「自分の先入見を消せます。自分ならこうだが、他人ならどう思うか。考えることにより、多角的に物事を見ることができます。多角的ということは、考える技を増やすことにもなります」
(中略)
ーー羽生名人と大舞台で3局戦われて、新たに見えた課題はありましたか?
「そうですね。直感的に見えるところが弱く、大局観がまだまだです。大局観は非常に相対化しにくいところなので、そこも問題ですね」
(中略)
ーー西遊棋の活動は対局に良い影響を与えていますか?
「マルチに活動することは、人間にとって視点を増やすことになります。そういう点では将棋にも人生にもプラスになっていると思います。そこでしか得られないさまざまな考え方は、いろいろなことを経験しなければ分かりません。将棋をやっているだけでは分からないことを経験するだけでも、全然違うと思います」
(中略)
ーー糸谷さんの人間性を構築する上で影響を与えたことは?
「大学の哲学科に進学したことは人間性に大きく影響しているのではないかと思います。自由に考えるということを、いろいろ学べたのではないでしょうか」
注目中の(笑)糸谷哲郎七段が、実力の更なる向上に向け、棋風改造を推し進めていたのは既知な一方、「とにかく対象や視点を限定せず、考えること」をその基盤活動と定義し、努めておられたのは無知だったが、本件は成る程に感じた。
将棋における勝負手は、ビジネスにおけるイノベーションに等しい。
イノベーションの源は「新たな思考」だが、それは不断の目標・問題意識の不意の結実だ。
目標を絶えず意識し、達成の為の問題とその解、並びに、その他人生の諸問題とその解を絶えず考え、思考のエンジンを常時パワーバンドに収めているが故、ある時突然、問題の解が、それも「新たな思考」という前代未聞の最善解が宿るのだ。
ちなみに、このロジックは、勝負手やイノベーションとまでは言わなくとも、問題や物事を敢えてやりかけにして床に就くと、睡眠中の無意識の思考が翌日予想外の有効解を恵む場合が少なくないことに通じている。
ここ一番で負けたくなければ、問題のブレークスルーを心底希求するならば、何より先ず、思考のエンジンを止めない態度習慣を自らに課すことだ。
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