2014年11月14日
【邦画】「男はつらいよ 第42作 ぼくの伯父さん」(1989)
[ひと言感想]
「満男さんは、幸せだからそういうことが言えるのよ」。
自分の不始末を棚に上げ、無責任に帰京(家出)を勧めた満男への泉の返事は尤もです。
不幸の始まりは、凡そ人生の選択を当然視し、あり難く思えなくなることから始まります。
「満男さんは、幸せだからそういうことが言えるのよ」。
自分の不始末を棚に上げ、無責任に帰京(家出)を勧めた満男への泉の返事は尤もです。
不幸の始まりは、凡そ人生の選択を当然視し、あり難く思えなくなることから始まります。
【奥村寿子(演:檀ふみさん)】
何時と思っとんね、叔母さんがどがい心配したか。
【泉(演:後藤久美子さん)】
途中でガソリンが切れちゃって、それが変な所で・・・
【寿子】
なんで電話ば、せんやったと?
【泉】
電話も無い所なのよ。
【寿子】
電話ぐらいどこででんかけられるでしょ。
【泉】
すいません。
【寿子】
もう叔母さん、胃の痛うなるごたったよ、無事で良かったけど。
【奥村嘉一(演:尾藤イサオさん)】
無事だったらええっちゅう問題じゃなかろうが。
叔父さんは、高校の教師やもんね。
その姪のあんたが、まるで不良のごと、男とバイクの二人乗りして夜中までほっつき歩いとっとを誰かに見られたら、どがんするつもりっか?
【寿子】
バイクで出掛くっと、あたしが許したことやけん。
【奥村】
この子は高校生よ、そぎゃんこつ、許されるわけなかばい。
【寿子】
ごめんなさい。
【満男(演:吉岡秀隆さん)】
あの・・・泉さんをバイクに誘ったのも、帰りが遅くなったのも、みんな僕の責任です。
どうもすいませんでした。
【嘉一】
東京じゃ、高校生のバイク乗りは許されとっとね?
【満男】
僕、高校卒業しました。
【奥村】
あ、浪人やったな。
【寿子】
あなた・・・
【奥村】
まあ、受験ば控えた今頃、バイクで九州旅行するぐらいじゃけんが、よっぽど秀才じゃろ。
偏差値は80くらいか?
【泉】
叔父さん、そんな言い方酷いわよ。
【満男】
泉ちゃん、オレが悪いんだから・・・
【寿子】
さあ、まあそのへんで。
あんたがた、顔でも洗ってきんしゃい、ね。
【満男】
叔母さん、僕、これで帰ります。
【寿子】
あら、こがん時間に・・・
【満男】
その予定でしたから。
失礼します。
【寿子】
(泉に向かって)
御飯ぐらい、食べてってもらったら?
【奥村】
「帰る」と自分で言うとるけん、良かくさ。
(満男は宿泊部屋に戻り、身支度を始める。泉がそれを見つめる)
【満男】
叔父さんに痛い所を突かれました。
偏差値は、90と言いたい所ですが、残念ながら、60に手が届くか届かないかという所でありまして・・・
【泉】
ごめんね。
【満男】
(泉を背にして、荷造りを続ける)
それにしても、叔父さんが高校教師とは知りませんでした。
そう言えば、物理のネズミ男に似てんね。
【泉】
もう言わないで、叔父さんの悪口は。
【満男】
最低だよ。
よくあんなヤツと一緒に暮らせるよ。
もう東京帰っちゃえよ。
【泉】
満男さんは、幸せだからそういうことが言えるのよ。
【満男】
(ハッとした顔で泉を見つめる)
【泉】
私は世話になっているのよ、あの叔父さんに。
【満男】
(息を飲み、肩を落とす。何かに気づかされたような表情をする)