2014年11月07日
【邦画】「男はつらいよ 第41作 寅次郎心の旅路」(1989)
[ひと言感想]
久美子は寅次郎を「故郷の塊みたい」と表します。
たしかに、久美子のこの言葉は言い得て妙ですし、悪意も無いに違いありません。
言われた寅も、満更でもありません。(笑)
しかし、郷愁を他者から指摘されるのは、イイ年をして本当に恥ずかしく、そして、情けない気がします。
なぜなら、それは過剰な郷愁だからです。
故郷を過剰に懐古、欲求するのは、現実が不満で、希望が無いからです。
同様に、懐メロばかり聴いているのは、新しい音楽を受け入れていないから、もっと言えば、新しい音楽を理解しよう試みていないから、です。
昔話ばかりしているのは、現在や未来が好ましく思えないから、もっと言えば、好ましい現在や未来への自助努力を怠っているから、です。
故郷も、懐メロも、昔話も、現実の逃げ場所ではなく、心の拠り所でありたいものです。
久美子は寅次郎を「故郷の塊みたい」と表します。
たしかに、久美子のこの言葉は言い得て妙ですし、悪意も無いに違いありません。
言われた寅も、満更でもありません。(笑)
しかし、郷愁を他者から指摘されるのは、イイ年をして本当に恥ずかしく、そして、情けない気がします。
なぜなら、それは過剰な郷愁だからです。
故郷を過剰に懐古、欲求するのは、現実が不満で、希望が無いからです。
同様に、懐メロばかり聴いているのは、新しい音楽を受け入れていないから、もっと言えば、新しい音楽を理解しよう試みていないから、です。
昔話ばかりしているのは、現在や未来が好ましく思えないから、もっと言えば、好ましい現在や未来への自助努力を怠っているから、です。
故郷も、懐メロも、昔話も、現実の逃げ場所ではなく、心の拠り所でありたいものです。
【久美子(演:竹下景子さん)]
私も川のほとりで育ったのよ。
【寅次郎(演:渥美清さん)】
ほー。
久美ちゃんの故郷はどこだい?
【久美子】
岐阜。
長良川のほとり。
【寅次郎】
あー、そらいいとこだあ。
【久美子】
きっとそのせいね、水を見ると気持ちが落ち着くのは。
【寅次郎】
帰りてえだろ、故郷へ。
【久美子】
(無言)
【寅次郎】
何か訳があったのか、こんな遠い国へ来たのは?
【久美子】
喧嘩したの、私、気が短いから。
【寅次郎】
誰と?
【久美子】
会社と。
【寅次郎】
ほー。
【久美子】
東京に出て、大きな会社で働いてたの。
日本人なら誰だって知ってる会社よ。
やなことばっかりでね。
同じ職場で好きな人ができたんだけど、結婚したら会社辞めなけりゃいけないって言うの。
そんな規則無いのよ。
でも、「習慣だからそうしてくれ」って。
「聞かない時には考えがある」って。
陰険な言い方で、脅かすの。
私、絶対戦ってやろうと思ってたら、ある日、彼が「お願いだからやめてくれ」って。
「自分の将来に差し支えるから」って。
悔しくて悔しくて私、みんなやめちゃったの、会社も彼も。
そして、退職金と貯金持ってヨーロッパ来ちゃった。
アテなんか何にも無かったんだけどね。
【寅次郎】
辛いことがあったんだろうな、今まで。
【久美子】
四年目から五年が辛かった。
それも冬。
寒いのよ、(ウィーンの)冬は。
街に出るのも人に会うのも嫌になってね。
何度も死のうと思った。
【寅次郎】
どうして帰らなかったんだい?
飛行機代ぐらい、親から工面できなかったのかあ?
【久美子】
悔しいじゃないの。
【寅次郎】
何が?
【久美子】
「ほら見ろ、偉そうな口きいたって、やっぱり女は駄目なんだ」なんて言われるの。
【寅次郎】
んー、偉いもんだねえ。
【久美子】
どうして?
【寅次郎】
恥ずかしいけどね、オレなんか旅先で風邪ひいて、宿屋の煎餅布団にくるまって寝てるとね、無性に故郷が恋しくなって、涙なんか出てきちゃったりするんだよ。
【久美子】
それでも帰らないの?
【寅次郎】
え・・・いやまあ、嘘言ってもしょうがねえからね、この際、本当のこと言っちゃいますけど、私はしょっちゅう帰ってます。
ええ、ですから、出たり入ったり出たり入ったりしてますから。
今でもすぐに帰りたいですよ、フフ。(笑)
(中略)
【久美子】
寅さんって、不思議な人ね。
【寅次郎】
不思議?
あ、そうかねー。
オレはとても常識的な人間だと思っているけどね。
【久美子】
故郷の塊みたい。(笑)
【寅次郎】
へえー。
【久美子】
寅さんと会った日の晩、故郷の夢見ちゃったの。
【寅次郎】
ほう。
【久美子】
私が、トランクがらがら引っ張って田舎のウチ帰るのね
玄関開けて、「ただいまー」って言うと、長ーい廊下の向こうから、去年死んだおばあちゃんが腰かがめて、泳ぐような手つきで出てきてね、「久美子、よう帰ったねー」って言うの。
私を一番可愛がってくれて、ウチ飛び出した時に、この指輪くれてね。
「困った時は、これを売るんだよ」って言ってくれたおばあちゃんなの。
私ね、「帰って来たよ、帰って来たよ」って言って オンオン泣くのね。
(涙で声が詰まる)
【寅次郎】
久美ちゃん・・・帰ろう、な。
そんなに意地なんか、張ることはないよ。
【久美子】
ダメよ。
【寅次郎】
どうして?
【久美子】
帰ったって、仕事なんか無いもの。
勝手なこと言って飛び出しているから、 親兄弟アテにする訳にはいかないし。