【邦画】「男はつらいよ 第12作 私の寅さん」(1973)【第85期棋聖戦/第一局】羽生棋聖、難局の緒戦を森内挑戦者の疑問手で間一髪制する

2014年06月02日

【営業】「営業は断られた時から始まる」E・G・レターマンさん

P139
10 惰性を克服しなさい
営業の敵は、競争ではなく惰性である。

見込客を顧客に変えるのはセールスマンの仕事であるが、その中でもっとも重要な仕事は、まず「動作」が存在しないところに「動作」を促し、その促された動作がよい方向に向いた時に、力を与えることであると、私はいいたい。

(中略)

静止中の物体が動きだすには、エネルギーが必要である、と科学は教えている。ある一定の進路を進行中の物体が、その進路を変えるにも、またエネルギーを必要とする。言葉を換えていうと、静止中の物体は、そのまま静止を続けようとする傾向があり、また一定の方向に向かって進行中の物体は、そのまま進行を続けようとする傾向がある。この傾向を惰性という。

また活動力のないものに活動力を与えるには、比較的大きな力が必要であることをわれわれは知っている。この自明の単純な原理を、セールスマンと顧客との日常関係にどのように応用したらよいか考えてみよう。

営業の仕事でもっともおろそかにできない敵は、競争ではなく惰性である。競争は大切である。なんといっても、営業戦線上、身近にいる敵は惰性である。この敵は二つに区分できるすなわちセールスマン自身が惰性のとりこになっているか、あるいは顧客がますます惰性のとりこになっていくのに、セールスマンが手をこまねていて傍観しているかのいずれかである。

(中略)

名選手ハンク・グリーンバーグが放った一言

(中略)

営業の面談中に、話が行き詰まって、一見どうにもならない羽目に陥る場合がある。よく検討してみると、事実、その困難は表面だけにすぎないのだが、話がいったん停頓すると、話を戻して軌道に乗せるのがむずかしくなる。とかく、こうした状態は、成約が間近に迫っている際に起こりやすい。

(中略)

いまさら、野球選手としてハンクの技量をうんぬんする必要はなかったが、年俸の点で、ハンクとしては希望を述べ、承諾を得るために交渉しなければならなかったわけである。だが、この点で双方の話に食い違いが起こり、交渉は一時暗礁に乗り上げた形となった。

(中略)

この時交渉を有利に転換させようと思った(デトロイト・タイガースの社長のウォルター・O)ブリッグスは、何気ないふうを装って、ハンクの年齢をたずねた。すると、ハンクは「26です」と答えた。

「26歳だって?」ブリッグスは、あたかも自分の耳を疑ったかのような振りをして、「ほう、ずいぶんお若いじゃありませんか。私があなたの歳には、週給20ドルしかもらっていませんでしたよ・・・」といった。

すると、ハンクはすかさず、「そうでしょう。でも、ブリッグスさん、私はあなたの歳になった時、週給20ドルもらえたら幸福だといわねばなりません。ですから、現在私にふさわしい収入が欲しいのです」といった。

このハンクの言葉の中には、ユーモアというよりも、むしろ識見とでもいうべきものが含まれている。一つのきっかけを、彼は巧みに利用した。そして、先方の話をかわして、たちまち自分にとって有利な情勢をつくったのである。しかし、それよりもさらに重要なのは、この言葉によって、彼は商談の惰性に終止符を打ったことである。ブリッグスとの話は行き詰まっていた。だが、交渉を進行させる糸口を切り開いたのである。小さな爆発ーー心機一転させる言葉の爆弾ーーが長引いた交渉を打ちきるうえにぜひ必要だった。二人のあいだの交渉も、当事者双方ともに惰性にかかっていたからである。

私は二つの考えを持って仕事をしているこの考え方は、一見矛盾したようにみられやすい。すなわち、その一つは、人間がなにかある行動をとるには、そうさせる他からの援助を必要とするということである。もう一つは、人間はだれでも、元来、率先してやったのだと思いたがることである。この二つの要素は、なにかを売り込む場合でも存在する。したがって、これに処していくには、積極性に富み、明敏な人物を必要とするわけである。

たしかに、一旦腰を下ろすと改めて立つのが非常に億劫になるように、人は惰性の虜に成り易い
E・G・レターマンさんは、「営業マン足る者、賢明な他者として、お客に適切なインセンティブを与え、惰性から解放し、購入に関する動作を援助して然るべきであるが、あくまで援助に留め、意思決定の功についてはお客に花を持たせなければいけない」と考え、日々の営業に励まれていたようだが、とりわけ後者のお考えは尤もだ。
営業は、お客さまを合理的に屈服させる試み、営みではなく、知見、先見の明、主体性の「捨てたものでは無さ」をお客さまに再発見、再認識していただく試み、営みなのだ。


P182
商談とは、堅い理詰めの話と、セールスマンに対する信用、セールスマンが代表する会社、商品、商標に対する信頼の念などがいっしょに組み合わされ、築きあげられて促進されるものである。理路整然とした説明を行い、セールスマンの立場を高めて、商談が運ぶのである。

しかし、理論だけでは十分とはいえない。感情は行動を促すが、理論はただ思想を刺激するだけだという考えをもって、私は常に行動してきた。財布の底をはたかせるには、感情に訴えることが必要である。なにか新しいものを所有する楽しさ、喜びは、惜しいと思う気持ちーーたとえ気前のよい人、金使いの荒い人でも、いざ小切手にサインする時か、苦労して貯めた現金や財産を手放す時に心に浮かぶ「惜しい」と思う感情より大きくなければならない

要するに、相手の胸と心に強く訴えることである。これが長年営業の道を歩んできた私の体験から生まれたモットーの一つである。また、話はできるかぎり、愛する女性、可愛い子供の幸福と結びつけて、買い手の心に強く訴えねばならない。

「行動を促すのは理論ではなく感情であり理論が果たすのは思想の刺激だけ」とのお考えも尤もだ。
たしかに、社長が話の上手い講師を研修会に呼び、良くできた話を何遍、何話社員に聞かせようと、それだけでは彼らの仕事ぶり、思考態度は変わらず、社内改革は見込めないが、その折、社長が現状に対する危機感を自分の言葉で切々と彼らに説き、かつ、社内改革への不追従を然るべき業績評価システムで合理的に咎める旨宣言すれば、彼らの仕事ぶり、思考態度は変わる可能性が高い。

この考えは正に普遍だ。
実際、将棋には「負けて強くなる」という言葉もあり、「負け」という合理的な結果(←将棋は完全情報ゲームであり、結果の帰趨は常に合理的)より遥かに、「負かされた・・・」という否定的な感情が精進を促し、棋力を向上させる。
本年の小学生将棋名人戦では、準決勝で惜敗した岡本詢也君が山田朋生アナから感想を訊かれ、言葉を発せず泣いていた。
岡本君にとって当時の涙と無念は、船江恒平五段の講評より遥かに精進の原動力に成るに違いない。



[新訳]営業は断られた時から始まる
E・G・レターマン
ダイヤモンド社
2014-01-24




★追記/ご参考:本ブログ記事をリンクしたfacebook上で、友だち&デキる営業マンの北村さんから頂戴したコメントと私のレス


  • 北村 和良 堀さんの教えは、断られてから始まるのではなく、断られない!じゃなかったでしたっけ?(^^;;
  • 堀 公夫 北村さん、こんにちは。私の教えをいつまでも励行くださり、ありがとうございます。北村さん、どうぞご安心ください(礼・笑)。本書の著者の教えと私の教えは、「営業マン足る者、お客さまに最終的に断られない(=『ノー』と言われない)よう、事前&最中&事後、できること、やるべきことをやる」というコンセプト&ロジックにおいてしかと通じてますので!本書のタイトルの「営業は断られてから始まる」というのは多分にツリでw、正しくは以下の四事項です(※あくまで私の理解ですがw)。

    【1】お客さまが営業マンに商談開始早々「
    ノー」と言うのは「挨拶代わり」の類であり、営業マン足る者、真に受けたり、ひるんだりしてはいけないし、そんな必要も無い。
    【2】お客さまが商談中営業マンに「ノー」と言うのは、商品の購入を前向き&真剣に考えているからこそ想像した購入リスクを検証したいがためであり、営業マン足る者、お客さまが商談や購入そのものを「ノー」と言っていると混同、誤解してはいけない。
    【3】営業マン足る者、大事なのは、お客さまに、商談や購入に関して本当に(=最終的に)『ノー』と言われないことであり、それまでに「ノー」と言われても、それ自体は、日頃自分のビジネスは勿論、お客さまや人間という生き物をよく勉強した上で、合理的かつ感情的にしかと対応すればいいし、お客さまもそれを本音では望んでいる。
    【4】とはいえ、野球に10割バッターが存在しないように、ビジネスに10割セールスマンも存在せず、営業マン足る者、一番大事なことは、お客さまに最終的に「ノー」と言われた商談と購入をしかと教訓化し、次回の商談、次回の、未来の成功にしかと活かせばいい。

    私の教えの中の「イエスの取得」は【2】と【3】に通じており、お客さまから本音の、「強いイエス」を取得しようとすれば、言葉や表現は色々あれ、何らかの「ノー」的な意思表示が出て然るべきですし、また、そうして「イエス」を一つずつ積み重ねて行くのも、お客さまに最終的に「ノー」と言われ難くするため、即ち、商談や商品の購入を「断られる」確率を下げるため、です。
    不肖私、デキる営業マンの北村さんの益々の公私両面のご成長、成功を、いつでもいつまでも祈念してますよ!

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kimio_memo at 07:31│Comments(0) 書籍 

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