2013年05月10日
【観戦記】「第71期名人戦七番勝負〔第2局の6▲森内俊之名人△羽生善治王位挑戦者〕藤井、長考を語る」上地隆蔵さん
昼食休憩を挟んで羽生(善治挑戦者)が△6四歩に50分、森内(俊之名人)も呼応するように▲4七銀に50分考えた。
じっくりと練って、ごく地味な手を指す。
達人同士の間合いの計り方で、いかにも名人戦らしい。
対局者の長考について、理事として現地を訪れた藤井(猛)九段に話を聞いた。
「私は8時間の経験しかないが(竜王3連覇、王座・王位挑戦)、2日目は勝負の場、1日目は勉強の場。
そんなふうに考えている。
だから序盤に関していうと、深く広くというより、目いっぱい広げていろいろな可能性を考える。
そういう時間の使い方は楽しいし、2日制のタイトル戦ならではと思う。
それに、この手でいこうと決めていても、改めて盤の前で読んでみると、『ハッ!』と相手の好手に気づくこともある。
やはり、本番と研究では真剣度が違うから」
藤井猛九段の「タイトル戦」、否、「大舞台」での長考論は尤もだ。
大舞台は、登壇者に潤沢なリソースは授けるも、極限の真剣さと緊張を強いる「究極の試練」だ。
だから、大舞台の登壇者は、平生では叶わない着想と行動が可能になり、ひと回り強くなる。
当然、強い人は大舞台に出ずっぱりになるからして、「強い人は益々強く、弱い人は益々弱く」なる。
人間の成長は、経験した試練の量と質に依存する。
私たちは、大舞台への登壇にもっと貪欲でなければいけない。
★2013年5月10日付毎日新聞朝刊将棋欄
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