【BSNHK】「100年インタビュー」山田太一さん【邦画】「明日の記憶」(2006)

2013年12月20日

【BSNHK】「100年インタビュー」十二代目市川團十郎さん

【渡邊あゆみアナ】
(実父の早世後、)そういう風に他所の方に教わって、しかも、みんなお父さまが上手だったこと、わかっているわけですよね。

【市川團十郎さん】
はい。

【渡邊アナ】
どんな感じですか?
以前、あれは後の團十郎襲名の時のでしたかしら、ずっと後のことになりますけどね、例えば、義太夫を(竹本)住大夫さんの所で習われて、「お父さんはそうじゃなかったよ」なんて、はっきり言われてましたよね。

【團十郎さん】
はい。
そうですよね。
はっきり言われるのが、一番いいことなんでしょうね。

【渡邊アナ】
でも、辛いですよね。
だって・・・

【團十郎さん】
いや、そりゃ、辛くない人生なんて無いじゃないですか。
皆さん、やっぱり、嫌な思い、辛い思いをすればこそ、何かが生まれるんですよね。
ええ。
そんな楽ばっかりできて、楽しいことばっかりあって、生きてたら、つまんないんじゃないですか。

市川團十郎さんのお考えは成る程だ。
たしかに、幸福が有り難く感じられるのは、不幸の方が圧倒的によく有るから、つまり、幸福の絶対量が不幸のそれより圧倒的に稀少だから、だ。
人生の辛さは、楽しさの必要悪なのかもしれない。


【渡邊アナ】
歌舞伎って、初代は随分新しいことを色々取り入れてやってきましたよね。
12代となると、守らなきゃいけない、伝えなきゃいけないモノがいっぱいですよね。

【團十郎さん】
いや。
守らなければならないモノはそれ程無いと思います。

【渡邊アナ】
でも、覚えなきゃいけない型も沢山あるし。
初代なら自由にやれたことが・・・。
大変だと思いますけれど・・・。

【團十郎さん】
いやあそれは創造する努力と、それからそれを繋げていく努力っていうのは、本質的には僕はそれ程変わらないもんだという風に思ってます。
一所懸命おんなじことを何回も繰り返して、繰り返してっていうことが、割合辛抱できない時代になってますけど、おんなじことを繰り返すっていうのは、実はね、結構創造しているんですよ。

【渡邊アナ】
そうですか。
おんなじことをずっと淡々とやることも大変だけど、新しさは無いように・・・。
そんなことはない?

【團十郎さん】
いや。
おんなじことができれば、もうその人は創造者より天才ですよ。

【渡邊アナ】
そうですか?

【團十郎さん】
そうです。
ですから、創造と継続っていうのは、僕はそれ程変わんない、お互いに創造している、という風に思ってますから、12代目ということであろうと、あくまで創造なんです。
(たしかに)おんなじことを先祖から受け継いでるっていうことはあります。
ただ、やはり、江戸時代、維新という明治時代、それから第二次世界大戦以後の時代、日本は戦争毎に色んなモノが変わっています。
でも、私とすると、今の伝わっている歌舞伎の中で、日本人の知恵がいっぱい詰まっていると思っています。
まあ、戦後、日本の人たちがなくしているのは、やっぱり自分たちへの誇りだと思いますよね。

【渡邊アナ】
西洋文化にちょっと傾いている所もありますよね。

【團十郎さん】
そうですね。
それから、まあやっぱり、余りにも流行に傾き過ぎるというのが、多分あると思います。
で、やはり、江戸の文化というのは、これから、NPOとか、或いは、ボランティアとか、(社会や市民が)そういうことを提唱されていますけど、実は、江戸の文化というのは、正にそれなんですよ。

【渡邊アナ】
ええ?

【團十郎さん】
江戸時代の、家を構えたり、田地田畑を持っている方は租税を取られますけども、庶民は税金無しですからね。

【渡邊アナ】
ああ、そうか。
そうですね。

【團十郎さん】
ええ。
その中で、給料も無しに助け合っているんですよ。
ええ、もう向こう三軒両隣。
で、お互いに顔を知っているのが一つの自警にもなってるし、それから、タダで相手を助けるっていうことは一杯やっているんです。
まあ、一つの例ですけどね。

かつてイチローさんは、「バッティングは動く」と仰った
これは、誤解を恐れず咀嚼すれば、「バッティングの理想の(=あるべき)軌道は不変だが、そのフォーム(=プロセス)は変動して然るべきだ」ということだ。
イチローさんのお考えは尤もだ。
そう、敵対する相手と時が変われば、プロセスも変わって然るべきなのだ。
投手が変われば投球も変わるし、時が変われば自分の肉体も内面も変わる。
昨日創造した最善のバッティングフォームは、昨日とは異なる投手に対峙し、昨日と異なる肉体と内面を持つ自分にはもはや最善のバッティングフォームではなく、最善のバッティングフォームを今日も継続実行したければ、今日改めて最善のバッティングフォームを創造し直さなければならない。

然るに、團十郎さんのお考えも尤もだ。
そう、(新規の)創造とその継続は、互いに「創造」が必然であり、「創造」を旨とする点で通底しているのだ。
「創造」の無い創造は当然有り得ないが、「創造」の無い継続も有り得ない。
継続には、昨日の延長線の「カイゼン」ではなく、ガラポンの「創造」が欠かせない。

継続とは、過去の創造物の単純リピートでなければ、焼き直しでも断じてない。
昨今、ターゲットの高齢化に伴い、懐メロが異常に増えているが、その過半は、加齢劣化した歌手が「創造」を怠り、過去の栄光を焼き直しているだけゆえ、希望を失望や後悔に変える元カレ・カノとのセックスと同義だ。



★2013年2月9日放送分
http://www.nhk.or.jp/hyakunen-i/backnumber/2007.html#a09



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kimio_memo at 07:44│Comments(0) テレビ 

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