【NHK】「大滝秀治さんを偲んで/オールドフレンド(ゲスト解説)」西田敏行さん、奈良岡朋子さん【邦画】「北のカナリアたち」(2012)

2012年11月29日

【NHK】[ETV特集「原田正純 水俣 未来への遺産」]原田正純さん

「医学は中立でなきゃいかん」というんですね、(そう)いう規範があるんですね。
で、「お前は、ちょっと患者側過ぎる」というね、批判が(自分に対してあるんですね)。
しかし、私はね、それは非常に有り難い批判だと思っています。
だってね、医学っていうのは、そもそも何の為にあるんですか。
お互いに、おんなじ力関係だったら、中立っていうのもあり得るかもしれない。
だけどね、圧倒的にね、力の強い側とね、力の弱い側があった時にね、「(医学は)中立(でなきゃいかん)」っていうことはね、実はね、強い側に協力していることになるんですよね、そうでしょ。
だからね、力関係がおんじななら、「(医学は)中立(でなきゃいかん)」というのもあり得るかもしれない、理論的には。
だけど、圧倒的に力関係がね、だって、患者とね、例えば、国とかね、資本とかいうのは、圧倒的に力があるじゃないですか。
その時にね、「(医学は)中立(でなきゃいかん)」って言って何もしないことがね、どうして中立ですか。
本当の中立っていうのは、そういう弱い立場の方に立つことじゃないですか。

だいたい、我々の仕事として医療をすれば、それは「患者の立場」だし、それを阻害しようとする権力があれば、当然その権力と対立することになるのであって、理屈でね、「(医学は)中立(でなきゃいかん)」だとか、「どっちの立場(に立っているのか?立つべきだ!)」ということではないんじゃないか、と僕は思っているんですね。

私は、原田正純医師のお考えを以下理解した。

〔1〕医療は、そもそも患者の為に存在する。
〔2〕ゆえに、医療従事者(提供者)である医師は、依頼人である患者の利益を最優先して然るべきだ。
〔3〕ゆえに、医師の立ち位置は、患者側に寄っていて、社会的には非中立的であって然るべきだ。
〔4〕また、一市民、一個人の力は、国や企業の前では知れている。
〔5〕ゆえに、患者は、病の前では肉体的弱者であるが、国や企業の前では社会的弱者だ。
〔6〕ゆえに、医師の立ち位置は、患者の病の原因が国や企業の場合、とりわけ患者側に寄っていて、社会的に非中立的であって然るべきであり、かつ、社会的に丁度いい。


いきなり余談だが、以上から、原田医師の持論を以下推量した。

〔A〕社会は平等であって然るべきだ
〔B〕しかし、実際の社会は、力関係がいびつで不平等だ。
〔C〕ゆえに、いびつな力関係は是正されて然るべきだ。
〔D〕ゆえに、(対象弱者以上の)強者は弱者を助けて然るべきだ。


私は、幼い時分、親や年長者から「弱きを助ける」よう説かれるも、その理屈は説かれなかった(と記憶している)。
なので、「社会の不平等を正す意味において、弱者を助けるのは強者の務めである」との原田医師の持論と理屈に感動した。

しかし、私は違和感も感じた。
なぜなら、この理屈は〔A〕が前提条件だからだ。
本当に「社会は平等であって然るべき」なのか。

私は、「社会は不平等であって然るべき」と考える。
なぜなら、社会は平等に成り得ないからだ。
人間は、生まれ出でる所も、ひいては、持てる能力も同一に成り得ない。
そんな種種雑多な人間で構成される社会は不平等であって当然、自然であり、平等なら不自然ではないか。

とはいえ、この違和感は私の持論に由来するものであり、正否の類ではない。
よって、この違和感はあくまで私の勝手に過ぎず、原田医師と決着を付けるべきものではない。

話を本題に戻すと、私は、原田医師が、この「正否の類でない」話を「正否の類」の話にしてしまわれた点で残念に感じた。
原田医師のお考えの内、〔1〕から〔3〕は「事実」で、展開が合理的だが、〔4〕から〔6〕は〔A〕を前提条件とする原田医師の「思想」で、展開が非合理的(主観的)だ。
原田医師は水俣病患者の為に国や企業と終生戦われたわけだが、合理、非合理入り混じったこの主張では、彼らに完全勝利できなくても当然、自然だ。
なぜか。

「道徳を忘れた経済は罪悪であり、経済を忘れた道徳は寝言である」。
これは二宮金次郎の名言だが、国や企業といった社会集団の本質は経済であり、いずれも経済無しには存在、存続し得ないことを良く言い表している。
経済は原因と結果の、即ち、「合理の」世界だ。
そんな「合理」の世界の住人に合理、非合理入り混じった主張をした所で、寝言と思われ、聞く耳をろくに持たれなくても当然、自然だ。

国や企業を相手どった市民運動が少なからず挫折しているのも、主張が合理、非合理入り混じっていることが大きいのではないか。
再稼動は反対だが、電気料金の値上げも、また、賃下げも反対」では、市民運動というより、低次のクレーマー集会と見下されても当然、自然だ。



★2012年11月11日放送分
http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2012/1104.html



水俣病 (岩波新書 青版 B-113)
原田 正純
岩波書店
1972-11-22




kimio_memo at 07:37│Comments(0) テレビ 

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