2012年07月06日
【BSTBS】「SONG TO SOUL 永遠の一曲」Aretha Franklin”Amazing Grace”〔解説〕エリザベス・ナイトさん
【ナレーション】
ロンドンから北西へ凡そ60キロの所にある小さな町、オルニー。
「Amazing Grace/アメイジング・グレイス」は、今から凡そ250年前にこの地で誕生した。
この曲の歌詞を書いたのは、町で牧師を務めていたジョン・ニュートン。
彼は今も、地元ゆかりの偉人として、人々の尊敬を集めている。
奴隷船の船乗りとして奔放に生きていたジョン・ニュートンは、ある時大きな嵐に出会い、
船が難破しかけた時、必死で神に祈った所、奇跡的に嵐を逃れ、命を取り留めた。
神の存在に気づき、悔い改めた彼は、牧師となり、この地に赴き、人々に神の言葉を説いた。
ジョンは、賛美歌の為に多くの詞を書いたが、その一つが「アメイジング・グレイス」だった。
名曲を生み、後に奴隷貿易の廃止にも力を尽くしたジョン・ニュートン。
彼は一体どんな人物だったのか。
【エリザベス・ナイトさん/クーパー&ニュートン博物館】
ジョンがここに来たのは1764年で、「アメイジング・グレイス」を書いたのは1773年です。
そして、彼のここでの最後の説教は、1780年の1月だったと思います。
彼自身のことばによれば、彼は「この上ない悪人」でした。
神を冒涜し、汚い言葉を使い、結婚していたにもかかわらず、女遊びをしました。
聖書を否定することも度々で、破滅への道を歩いていました。
しかし、自分はその状態から「神の恵みによって救われた」と言っています。
嵐の中で命が助かった後、彼は人生をキリストに捧げたものの、奴隷商人の仕事は続けました。
それは当時、一つの貿易として受け入れられていたからです。
しかし、病に倒れ、彼はリヴァプールで港の役人になり、それを機に教会の集まりへ説法を聞きに行くようになりました。
人々に説く「コツ」を学ぶためです。
キリストに目覚めた後は、彼は女性と過ごしたり、神を冒涜したりする代わりに、すべての時間を勉強に費やしました。
ヘブライ語や聖書とそのメッセージをよりよく理解するために必要な勉強をしたのです。
ここは、とても貧しい町でした。
人口の3分の2がレース編みをし、残りは農業をし、人々は全く教養がありませんでした。
彼は、自分に与えられた物を人々に配って回りました。
その時、人々が編み物をしながらリズムをとるために、ちょっとした節(ふし)を唱えているのを聴いて、彼らに節を教えることを思いつきました。
自分の賛美歌を通して聖書を学んで欲しいと考えたのです。
当時の牧師が「地獄の責め苦」について語る代わりに、彼は「グレイス」について語ったのです。
もしかすると、それまで人々は「お前は罪人だ」とか、「こうしないと、お前は破滅に向かうだろう」などと言われることに飽き飽きしていたのでしょう。
そこにやってきたニュートンが、「神の恵みがあなたを救ってくれるでしょう。キリストの愛をただ受け入れるだけで 、神が救ってくれます」と言ったのです。
だから、これほどポピュラーな詞になったのかもしれません。
なぜ、ジョン・ニュートンさんが書いた「アメイジング・グレイス」は、約250年前、ロンドン郊外の小さな町の民衆の心を悉く引いたのか。
また、なぜ今尚、世界の民衆の心を引いて止まないのか。
エリザベス・ナイトさんのお話から直感したのは、「性善説の太陽説法だから」だ。
「お前はそもそもダメな奴で、・・・しないともっとダメになる」という、相手の資質と可能性を否定し、リスクヘッジ的に特定行動を強いる「性悪説の北風説法」より、「お前はそもそもやればデキるヤツで、・・・すればもっと良くなる!」という、相手の資質と可能性を肯定し、追加幸福的に特定行動を促す「性善説の太陽説法」の方が、私たち大衆の心を強くかつ持続的に引けるに違いない。
当時、ジョン・ニュートンさんが、本事項を心得て「アメイジング・グレイス」を書かれたのか否かは、不明だ。
しかし、人々に説く「コツ」を学ぶべくリヴァプールで説法をよく聞き、ターゲットの民衆が知力は無くても音感やリズム感が有るのに着目し、賛美歌を通して聖書の学びを勧めておられたのを鑑みるに、キリストの教えに限らずアイデアは、「いかに説教するか」より、「いかに受容されるか」が肝だと、数多の説教とその挫折の果てに痛感なさっていたのが窺える。
「性善説の太陽説法」が私たち大衆の心を強くかつ持続的に引く一番の理由は、私たちの自尊欲求を強烈に鼓舞することに違いないが、数多の挫折に信念を譲らなかった勇者だけが会得できることも、同等の大きな理由ではないか。
★2012年7月3日放送分
http://w3.bs-tbs.co.jp/songtosoul/onair/onair_65.html
kimio_memo at 07:49│Comments(0)│
│テレビ

![アメイジング・グレイス [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/51lBapGo3wL._SL160_.jpg)