2012年06月01日
【観戦記】「第70期名人戦七番勝負〔第3局の13▲森内俊之名人△羽生善治王位挑戦者〕まだまだ終わらない」甘竹潤ニさん
この将棋には、「前編」と「後編」に大きな見せ場が1回ずつ訪れる。
前編は「1点差を逃げ切るのが得意な名人」(島九段)が先手番の得を生かして奪ったリードを着実に広げていく場面。
そして後編の主役は羽生(善治)だ。
控室の誰もがサジを投げた局面から、すさまじい勝負への執念で森内(俊之名人)を凍りつかせた。
「羽生さんでなければこんな迫力のある終盤戦にはならなかった。森内さんの長所だけが出た凡戦になっていたかもしれません」と島(朗)九段。
(中略)
午後8時9分、森内の秒読み(残り10分)が始まった。
「50秒だけ読んでください」と記録係に告げ、目薬を射した森内はやがて▲7五角(本日終了図)と据えた。
局後、羽生が思わず「いい手でしたね」とつぶやいた攻防の角。
今度は羽生がコンコンと考え始めた。
混沌の中、森内俊之名人が捻り出した好手▲7五角に、局後、羽生善治挑戦者が「いい手でしたね」と思わず呟いたこと、即ち、当時、劣勢の羽生さんが森内さんの好応手に素直に感心感動していたことに、恐縮ながら、不肖の私も感心感動した。
迫力ある終盤戦、勝負とは、いかなる形勢下でも、自分と相手を信じ、決着までの相手との応酬を積極評価、満喫した賜物に違いない。
★2012年6月1日付毎日新聞朝刊将棋欄
http://mainichi.jp/enta/shougi/