2012年05月24日
【荒川将棋教室】「第70期名人戦第四局▲羽生善治二冠△森内俊之名人」佐藤康光王将、室岡克彦七段

(46手目の)△3三桂は「当分受けに回ります」という手で、なかなか指せない。
ただでさえ、矢倉(※戦法名)の後手番は受け、守勢に回り易い。
だから、普通の棋士は攻められる先手番が好きなのだが、森内(俊之)さんは後手番が嫌いではないのではないか。
(58手目の)△2四歩は本来酷い手だ。
この手を指す所に、森内(俊之)さんの読みの深さが表われている。
外野で「この局面なら、私なら投げます(=負けを自認、宣言します)」と言っている人ほど、実際の対局では投げない。(笑)
同一の局面、結果でも、性格や棋風で、思考、言動が違ってくる。
たとえば、詰みまであと一手足りない時、慎重な人は「僅かに詰まない」と言う。
だが、楽観派の人は「全然詰まない」と言う。
羽生(善治)さんは、(持ち)時間の使い方が上手い。
だから、終盤でも切迫していることがない。
これは、「それまで、すべき局面でしかと決断している」ということだ。
最終番でも二分残しているので、秒読みの一分将棋になるまでの一分間、しっかり考えてくる。
「自分は一分将棋にならず、相手を一分将棋に追い込む」ことができるのが、勝てる人だ。
棋士もトシをとるし、疲れる。
将棋の厳しい所は、最後は数学的結論を出さなければいけないことだ。
中盤までは事前の研究や大局観を使えばいいのだが、最後は正確に答えを出さなければいけない。
この点で、将棋は囲碁と少し違う。
(※113手目、先手▲の羽生さんが2五飛で飛車を切るのではなく、6八角を指したことについて)
やはり、羽生さんは、基本慎重だ。
たしかに、羽生さんを傍から見ると、「決めに行けばいいのに」と思うことが少なくない。
しかし、実際にこのような時に決めに行くと、10回に1、2回酷い目に遭うことがあり、こう慎重に指しておけば、酷い目に遭うのは100回に1回有るか無いかだ。
かつて村山聖九段は「羽生さんは次善手で勝つ」と言ったが、実際、最善手ではなく、次善手で勝てるから凄い。(笑)
この手もそういうことなのだろう。
大山康晴名人の流れをくむ、達人の技だ。
本人に真意を問えば、逆に、「なんで、こう指しておいてダメなんですか?」と返されるに違いない。
ともあれ、これで羽生さんが負ければ、後でこの手の是非が問われるだろうが、この(勝勢)のまま勝利すれば、謎のまま終わる。(笑)
棋士の中には、「この手は未着手に終わったが、なんでこの手でダメなんだろう?」とずっと謎を引きずってしまう、考え続けてしまう棋士も居る。
佐藤康光王将は、敬愛する棋士の一人だ。
だから、メディアに流れない今回の大盤解説は、大いに期待していた。
解説時間は凡そ3時間に渡ったが、非常に内容が濃く、大いに満足した。
佐藤さんの解説は、テレビやニコ生とは異なり、言葉を止め、大盤に集中する時間が少なくなかった。
佐藤さんのこと、最善手は忽ち見えるに違いないが、対局者の森内俊之名人や羽生善治二冠と同じ立場、視座で、最善手を上回る最善手を探求なさっているように窺えた。
昨今、佐藤さん、並びに、羽生世代の復興が目覚しいのは、かくして勝負と成長(実力向上)機会に絶えず真摯かつ貪欲であることが効いているのではないか。
佐藤さんのお話の内とりわけ考えさせられたのは、羽生善治二冠の持ち時間の使い方の上手さに関してだ。
たしかに、私は、すべき局面でしかと決断せず、切迫の果て、成果の果実にありつけない、逃してしまう、ことがままある。
時間と精神余裕というリソースの消費進捗に、もっと頓着しなければいけない。
余談だが、佐藤さんは、本会終了後、会場の撤収作業に率先なさった。
恐縮だが、タイトルホルダーであり、トップ棋士の佐藤さんが、疲労を内に秘め、普通に会場の机や椅子を並べ替えている様を見、感心感動した。
佐藤さん、並びに、羽生世代の持続的な強さは、非凡と凡人の同棲の妙にあるのではないか。
★2012年5月23日サンパール荒川にて催行
https://twitter.com/murooka1/status/205185936592601088
http://ameblo.jp/murooka-katsuhiko/entry-11230573218.html
※上記内容は、佐藤康光王将と室岡克彦七段の会話の意訳です。







★上記画像のスライドショーは↓のfacebookアルバムを閲覧願います(※非fbユーザーでも閲覧可)。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.4062163635232.176099.1316444751&type=3&l=97edbe56bf
kimio_memo at 10:18│Comments(0)│
│将棋大盤解説会