【邦画】「蟻の兵隊」(2006)【夫婦】「夫婦は話し方しだいで9割うまくいく」高橋愛子さん

2012年04月03日

【金融】「バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容」アダム・レボーさん

P38
(バーナード・)マドフに騙された投資家たちの中には、彼が犯罪すれすれのことをしているのでは、と疑う人たちもいた。
しかし、株式市場の状況がひどい場合でも利益を出し続ける魅力的な投資先は他になかった。
多くの個人投資家、機関投資家は口座に金が振り込まれている限り、いや、数字が書き込まれている限り、検証などしていなかった。

疑いを持った投資家たちがそれ以上踏み込めなかったのは、あるウォール街の証券会社の重役が語ったコトバである「不法の甘い香り」に幻惑されたからだ。
「何か怪しいことをしているのだろうが、儲かっているならそれでいいや」だった。

いつの世も、禁断の果実は非常に甘く、私たち人間を魅惑する。
そして、利己主義、刹那主義、現世利益主義が、その後始末を後世へ押し付ける。


P57
アーノルド・ロススティーンはその時代のバーナード・マドフともいうべき犯罪の天才であった。
彼は手際よく、企業経営のように、そして完璧に犯罪を実行する方法を熟知しており、巨万の富を得る機会を数多く手にした。

(中略)

ロススティーンは詐欺師というよりも密造酒業者であったが、知能犯という意味では、まさしくバーナード・マドフの大先輩だった。
リッチ・コーエンは、アメリカのユダヤ系ギャングたちの研究をまとめ、著書『ユダヤ系のならず者たち』として発表した。
その中で、次のように書いている。
「ロススティーンは、20世紀初頭の資本主義の特徴をきちんと理解していた。
その特徴とは、偽善、疎外、強欲である。
そしてロススティーンは、それらの特徴を利用することに長けていた」

偽善、疎外、強欲が特徴なのは、20世紀初頭の資本主義に限らない。
これらは私たち人間の性であり、資本主義はその増幅器に過ぎない。


P215
フィードバック・ループを違う言葉で言い換えるなら、「人々が持つ過度の幻想」ということになる。
人がどうしてリスクを取ることを躊躇しないかについてを研究した『騙されやすさの年代記』の著者スティーヴン・グリーンスパン教授は、社会からの圧力によって人間の行動は決定されると述べている。
つまり、人間が騙されやすいのは「人々が他の人たちに勧めている」からだというのだ。

グリーンスパン教授は次のように書いている。
「マドフのねずみ講の被害者たちは、個人投資家、機関投資家を問わず、何か失うことを極度に恐れていた。
私たちは誰か、素晴らしいものを持っている人たちの行動の真似をする傾向がある。
それは『裸の王様症候群』と呼ばれている。
私たちは他の人たちの行動を見て、何の疑問も持たずに真似る。
その結果、多くの人間が勝ち馬に乗る『バンドワゴン効果』が生まれる。
社会からの圧力が強くなればなるほど、人間は騙されやすくなる。
マドフの事件に関して言えば、そこには強欲さと恐怖感のコンビネーションが見られる。
ここで言う恐怖感とは、他の人々が金を儲けているのに、自分は大きなチャンスを逃していると感じることだ」

(中略)

ウォール街で活動するある投資銀行家は、次のように述べている。

「ウォール街には、何らかの不正が行なわれていると言うと、それを無邪気に否定する単純な人たちがいます。
しかし、多くの人たちは、不正が行なわれていることを知っています。
私が頼んでいる会計士たちの顧客にマドフの被害者が5人もいたそうです。
会計士たちはマドフ投資の会への投資をやめるように意見したのに、彼らは耳を貸しませんでした。
逆に、被害者たちは会計士たちとの契約を打ち切ると言い出しました。
マドフの前に、まずお前との契約をストップしてやる、と怒鳴ったそうですよ」

マドフのねずみ講の被害者たちは、内心、何かおかしいのでは、と疑念を持っていたが、その疑念を払拭するために、自分の友人や親族に対してマドフ投資の会に投資するよう勧誘した。
仲間を増やすことで、無意識のうちに、マドフは大丈夫だ、と安心しようとしたのだ。
前出の投資銀行家は次のように言っている。

「人間は自分がやっていることがいつか破綻する、もしくは全くあり得ないことが起きていると気づいた時、身を守るために変節者となるのです。
自分は間違っていないという安心感を得るために、悪いことだと思いながらも、身近な人をねずみ講に誘ったのです。
だから、被害が拡大してしまったのです」

私たち人間は、絶えず自分を騙している。
夢想や自己正当化は、望む人生を歩んでいない自分を好都合に騙し、刹那の慰めと安心を得る術だ。

しかも、その多くは、「自力」ではなく「他力」だ。
主犯者を他者にすげ替えれば、共犯者を作れば、他者に責任転嫁できる気が、自分の可能性を温存できる気がするからだ。

たしかに、望む人生を歩むことは難しい。
しかし、難しいからと断念、放棄し、さも望む人生を歩んでいるように自分を他力で騙すくらいなら、自力で騙すべきだ。
不幸な人生の主犯者は、共犯者を何人道連れにしようと、自分以外あり得ない。







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