2012年02月22日
【観戦記】「第70期名人戦A級順位戦〔第37局の1▲渡辺明竜王△丸山忠久九段〕2枚の貧乏クジ」甘竹潤ニさん
2・1、ラス前一斉対局。
「羽生挑戦決定か」にファンの注目が集まった大阪対局とは趣を変えて、こちら東京では熾烈な残留争いが焦点となった。
渦中にいるのは1勝6敗の高橋、丸山、久保(大阪対局)の3人。
このうち2人が陥落の貧乏クジを引くことになる。
かつてない苦戦を強いられている丸山。
すでに自力の目はなく、この日、高橋勝ち、丸山負けだと最終日を待たずして14期守り通してきたA級の座から滑り落ちてしまう。
なのにこのおだやかな表情はどこからくるのだろう。
そこには険しさも緊迫感も感じられない。
時に目をつぶり、まどろみ、ほほ笑んでいるようにさえ見える。
挑戦権にわずかな望みを残している渡辺のほうが表情が硬く見えた。
冷えピタ事件(?w)に加え、昨年の竜王戦では食事やオヤツでも将棋ファンを沸かせた丸山忠久九段だが、要するに、丸山さんは、タイトルを取りたいが為に、A級に在位したいが為に将棋を指しているのでは決して無く、ただひたすら眼前の一局を自分らしく指し切りたいが為に将棋を指している、プロ棋士であり続けている、ということではないか。
凡人には開き直りとも取れる丸山さんの態度は、非凡な丸山さんのそんな無心の表れではないか。
そして、丸山さんにとっての食事やオヤツは、そんな強靭な無心を貫く「丸山ガソリン」ではないか。
★2012年2月22日付毎日新聞朝刊将棋欄
http://mainichi.jp/enta/shougi/