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2011年11月24日

【将棋】「AERA2011年10月24日号/渡辺明の強さの秘密・羽生の集団催眠解いた男」渡辺明さん

P31
渡辺にとって将棋の研究は楽しいものなのか、それとも苦しいものなのか。

「いやあ、半々ですかね」という答えが返ってくるかと思いきや予想ははずれ、渡辺はキッパリこう言い放った。

将棋の研究は楽しいということはありませんね。
基本的には渋々やっています

世の中のサラリーマンがこなすルーチンワークとも異質な感覚という。

社会に出て会社勤めするのは大変です。
会社の仕事は、やらないとクビになってしまうじゃないですか。
将棋指しの勉強は、別にやらなくても将棋は指せますからね。
そのぶん楽ともいえるのでしょうが、だからこそ渋々やらなくちゃけない。
何もやらなくてもいい成績が残せるなら一日中、競馬見たり子どもと遊んだりしていますよ。
研究に駆り立てるものは、ある程度のレベルの将棋は指さなくてはという義務感ですね。
それで渋々やっている以上は、勝つくらいしか楽しみがない。
その点についてはかなり執着しています

非凡の思考を凡人が読み解く愚を覚悟すれば、要するに、渡辺明竜王は以下の様にお考えということか。
相応に正しければ、渡辺さんが「極めて合理的、現実的で強い」のが改めて深く頷ける。



サラリーマンにとっての仕事は、プロ棋士にとって対局(=公式戦で将棋を指すこと)だ。
サラリーマンが仕事をサボると職業(生活の糧)を失う可能性があるが、プロ棋士は、そもそも将棋が好きでプロになるからして、対局をサボることは考え難く、対局をサボって職業を失う可能性は低い。
また、対局そのものは「やればできる」ので、対局するからといって、将棋を研究すること、勉強することは必ずしも必要ではない。
つまり、サラリーマンとして日々仕事をしている多くの将棋ファンと比べると、自分たちプロ棋士の生活はボトムラインが低く、楽だ。

しかし、プロ棋士は、元々「将棋を指すことが何より好きだから」、「もっと強い人に勝ちたいから」、「もっと強くなりたいから」プロ棋士になったはずであり、「生活が(サラリーマンよりも)楽だから」ではないはずだ。
それに、プロ棋士は、多くの将棋ファンが注目してくれるからこそ、存在し得る職業だ。
そもそも将棋は、食べ物のように生命の維持に貢献する必需品とは異なり、映画のように精神の高揚に寄与する娯楽品だ。
つまり、プロ棋士は、彼らに感動で精神的に報恩することが義務付けられた職業であり、彼らより生活が楽であって然るべきではない。

もし、プロ棋士の生活が将棋ファンより楽なら、それは、義務を怠っている、即ち、彼らにプロ棋士ならではの高レベルの将棋を披露していないはずで、実績もたかが知れよう。
彼らにプロ棋士ならではの高レベルの将棋を披露するには、渋々であれ、日々不断に将棋を研究、勉強し、実力の向上に勤しむのが順当だ。
そして、人生をかくも費やしてやるからには、何としても対局で勝つべきだ。
さもなくば、人生、何をやっているかわからなくなり、損だ。






※1:その他の感動箇所は、こちらのwebページに原文のみ転載
※2:原文のインタビュアー(記事執筆者)は将棋観戦記者の小暮克洋さん



kimio_memo at 07:51│Comments(0) 書籍 

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