2011年11月18日
【観戦記】「第70期名人戦A級順位戦〔第20局の6▲屋敷伸之九段△丸山忠久九段〕逆転したが・・・」関浩さん
この日は夜戦を迎えても、恒例となった丸山の収熱用品は出なかった。
「涼しくなったせいではないか」との声も聞かれたが、丸山の収熱用品が有名になったのは、前期のA級最終日のことである。
そもそも脳のほてりに季節は無関係だろう。
見た目の滑稽さに耐えて、勝負への執着に徹する姿勢とは、一つの誠実さの表れとは言えまいか。
ひとたびそう思ってしまうと、収熱剤を額に当てない丸山に物足りなさを感じてしまうから、おかしなものである。
図の(後手丸山忠久九段の)△1七銀で後手よしと見たのは、盤側の速断だった。
(中略)
4手後の△7五金にも妙防があった。
この手は6五の銀取りと△9五角が狙いだが、じっと(先手屋敷伸之九段の)▲6九玉の好手があった。
(中略)
本譜は狙いの△9五角が実現し、今度こそ丸山の攻めがつながったはずだったが、1分将棋の丸山が誤る。
不遜かつヘボの床屋談義だが(笑)、丸山忠久九段が本局を落としたとすれば、それは冷えピタ、もとい(笑)、収熱用品の使用を端折ったからではないか。
収熱用品を額に当てる恒例を端折った丸山さんに物足りなさを感じたのは、観戦記者の関浩さんより、対戦者の屋敷伸之九段の方が遥かに上回っていたのではないか。
▲6九玉の好手は、その物足りなさに対する屋敷さんの発奮だったのではないか。
また、丸山さんが本局で収熱用品の使用を端折ったのは、勝負への誠実さに加え、自己を最強のマシン化する努力をどこか端折ったてん末だったのではないか。
終局間際の1分将棋という極限状態での失着は、そのてん末の当然の帰結だったのではないか。
★2011年11月18日付毎日新聞朝刊将棋欄
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