【BSフジ】「その時、私は」小田禎彦さん(加賀屋代表取締役会長)【インタビュー】〔「匿名でいい仕事」が基本〕山下達郎さん

2011年08月19日

【BSフジ】「その時、私は」森村誠一さん

絶対にね、物理的に不可能なような状態でもね、(原稿の)依頼があると逃しませんね。
昭和一桁、二桁初期の人は「飢えていた」んですよ。
それで、「作家になりたい」という、とにかく「作家にならなかったら生きている意味が無い」ぐらいに思い詰めた人たちが多かったですね。
(中略)
つまり、僕らにしてみると、小説の原稿の依頼というのはですね、「自分の精神を買いに来る」という風に考えているんですよ。
だから、「精神を買いに来てくれる」、こういうね、人、お客さんを絶対逃さないっていうね。
それから、もう一つは、「この美味しい依頼、仕事をですね、断ったら、誰が書くかな」って、すぐ思う。
で、「多分あいつが書く」と。(笑)

二つのことについて考えさせられた。

一つは仕事の依頼は「自分の精神を買いに来る」のと同義、とのお考えについてだ。
たしかに、この世に、同じ精神は二つとない。
そして、いずれの精神も唯一無二だ。
その唯一無二の自分の精神を買いに来てくださった人を無碍にするのは、自分が唯一無二の精神を売らんがために数多の困難、リスク、不確実性を甘受して作家になったことと、自分が生業として唯一無二の精神を売っていることの矛盾であり、かつお客さまが自分の精神の唯一無二性を評価、期待くださったことへの無礼である。
森村さんは、きっとこうお考えなのだろう。
森村さんの自己矛盾と顧客への無礼に対する忌避感は尤もに感じた。

もう一つは、仕事の依頼は自分が受けなくても(=断っても)他者が受けて事足りる、とのお考えについてだ。
たしかに、この考えは、一つ目の考えと矛盾する。
しかし、これが「仕事を依頼する(=商品を購入する)」ことの実際、ひいては、ビジネスの本質であり、逆らうのは不賢明である。
森村さんは、きっとこうもお考えなのだろう。
また、誤りを恐れず推量すれば、心のどこか片隅で、自分の精神の唯一無二性は知れている、とも。
森村さんのビジネス認識と自己過小評価も、尤もに感じた。


(「高層の死角」の舞台にホテルを選んだ理由について)新人が賞を望む時はですね、一番強い所を使うんですよ、大体、自分の一番強い所。
で、そういう意味では(私は新卒で就いた職場がホテルなので)、ホテルが一番強いですからね。
で、そこで勝負して。
で、その後は、自分の強い所は書かないようにするんですね。
むしろ、弱い所を書くようにしていく。

高層の死角 (角川文庫)
森村 誠一
KADOKAWA
2015-02-25



森村さんのお考えから、元イエローキャブ社長の野田義治さんが得意とする「巨乳マーケティング」を想起した。
「巨乳マーケティング」とは、まずは一番(唯一)の強みである巨乳のグラビア露出でブレークを狙い(一点突破を目指し)、実現の後は、服を着せ(=巨乳を封印し)、タレントや俳優といった「長く食える」仕事に路線変更する、というものだ。
森村さんのお考えは、これまた尤もに感じた。


(「これからチャレンジしたいことは?」の問いに)折角吉川英治文学賞を頂いた「悪道」というのが、なかなか自分にとっては、気に入っているテーマなんですよ。
特に、東北が舞台になりますでしょ。
今は、東北の被災者の方々というのは、「生存」ですね「生活」ではなくて、「生存」状態(にあると思うんですね)。
で、どうやって「生存」してこうかっていう時代にですね、小説っていうのはね、「生活」のために必要なんですよ。
小説とか文芸はじめ、音楽とか絵画とか、これはね、「生活」になってから必要になってくる。
で、「生存」状態でも求める人も居ますけど、少数派ですよね。
で、そういう「生存」状態の時は、(小説を世に出すのは)まだ早い。
だから、「生活」状態に被災者の方々が立ち直ってきた時のためにですね、今から書いておきたいなと思っているんですね。

悪道 (講談社文庫)
森村誠一
講談社
2012-12-21



自分がプロフェッショナルで居られる時代を正確に理解する。
そして、時代の輪廻を信じ、プロフェッショナルとしてやるべきことをやり続ける。
こう思考、行動し続ける森村さんが、約40年もの長きに渡り人気作家として君臨なさっているのは、やはり尤もに感じた。



★2011年7月16日放送分
http://www.bsfuji.tv/top/pub/sonotoki.html



kimio_memo at 07:23│Comments(0) テレビ 

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