【インタビュー】〔「匿名でいい仕事」が基本〕山下達郎さん【大和証券】「第5回大和証券杯ネット将棋最強戦決勝戦▲村山慈明五段△菅井竜也四段」深浦康市九段

2011年08月21日

【将棋】「真剣師小池重明の光と影」団鬼六さん、小池重明さん

P27
ふと、気づくと横浜から小池(重明)の葬儀に出席してくれた荒井治八郎さんの姿が見えなかった。
荒井さんは横浜西口将棋センターの常連で小池とは全く面識のない初老の紳士。
単に、小池のファンだとして葬儀に列席したわけだが、生きている小池に香典を送ってくれた人である。
『将棋ジャーナル』で病院の小池、余命、いくばくもなし、を発表し、病苦と生活苦にあえぐ小池に物好きな人あれば香典の先渡しを頼む、と半分ふざけて編集部に書かせたら真っ先にジャーナルに小池の香典を送ってくれた人だ。

(中略)

生きたまんまで香典を受取り、礼状を書いた男は前代未聞のような気がするのだが、小池の葬儀に出席し、僧侶の読経の最中、眼鏡を押さえていた荒井さんは後で私にその前代未聞の生者からの香典の礼状というものを内ポケットから出して見せてくれた。

この小池さんからの礼状は我が家の宝にするつもりなので差し上げられないが、あとでコピーしたものを送ります、といって荒井さんがあとで私に送ってくれた生者からの香典礼状のコピーは左の通りである。

前略、先日、団氏より荒井さんの御厚志を有難く頂戴致しました。
本当にありがとうございました。
埼玉に住んでおりましたが思うところあり、現在は茨城の石岡市に来ています。
出血は止まったものの肝臓の調子は悪く(肝硬変)現在も入院中です。

昔、秋葉原のラジオ会館や将棋連盟で行なった東日本正棋会の事が思い出されます。
病人の私が言うのはおかしな話ですが、将棋の必勝法は忍と愛情です。

これからも荒井さんのご活躍を楽しみにしております。
簡単ではございますが、本当にありがとうございました。

早々

荒井治八郎殿

小池重明

「将棋の必勝法は忍と愛情である」。
「新宿の殺し屋」との異名を持ち、プロ棋士とも互角以上に渡り合った小池重明さんは、そう洞察し、終生全うなさった。
だから、将棋ファンの荒井治八郎さんは、この一節が書かれた小池さんからの香典礼状を家宝になさったのではないか。

たしかに、小池さんが洞察し、終生全うなさったこの必勝法は、万事に当てはまるに違いない。
しかし、小池さんは、この必勝法を、将棋にのみ、誰よりも、もしやプロ棋士よりも、全うなさった。
将棋以外の物事に全うなさることは、見事なまでにつゆも無かった。
だからこそ、この必勝法は、将棋のそれとして、将棋ファンの荒井さんに最上の説得力を与えたのではないか。
アイデアの価値は、提唱者の全う度合いで決まる。







kimio_memo at 08:01│Comments(0) 書籍 

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