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2011年08月08日

【人生】「一期は夢よ、ただ狂え」団鬼六さん

P150
若い層にこれまでのワイ本の名作というのは何になるか、という質問を受けて、私は永井荷風作かもしれぬという「四畳半襖の下張」を推薦したが、読んだ彼らからは大して感じなかった、という答えが戻って来た。

四畳半襖の下張り
金風山人、永井荷風(著)
グーテンベルク21
2012-12-19


こんなものに昂奮するなんて昔の人は随分単純だったのですね、というのである。
エロスの概念が昔と今とではすっかり変わっているのである。
矢鱈に長襦袢や蹴出しが出てくるので彼等の持っているエロスの情感は削がれたらしい。
当節のエロスマニアにとってはこの作品は名作だといっても陳腐以外何も感じられないのである。
ポルノ小説としては最低という奴もいた。
ポルノ小説とワイ本の差がわかっちゃいないのである。

現在、ポルノもワイ本も同等になっていて、どこまでがポルノでどこまでがワイ本になるのか、この差が全くなくなっているらしい。
文豪の描くいわゆる性文学というのは性を通じて人間を描こうとするものだが、ポルノ小説というのは人間を描くのではなく性のみに重点を置くもので、ワイ本というのは何が何でも男を勃起させようというものだ。
女を濡らさせるためのものもワイ本になる。

私がその昔、描いた「花と蛇」という長編小説はポルノ小説ではない。
あれはワイ本である。
これでもか、これでもか、といった風に男を勃起させるための官能描写だけの羅列であるからあれは完全なワイ本である。
だから、昔、ポルノ小説をお書きになっていた、のではなく昔、ワイ本をお書きになっていたといわれると私は満足するのである。

根源的なエロスというものは昔のワイ本の中に残っているのだが、これが理解出来ないのはエロが大病に冒されているからだろう。
というより、エロスは倒錯時代に入ったと見るべきかもしれない。

団鬼六先生亡き後、誰が性文学とポルノ小説とワイ本の差異を説けよう。
エロスは、文学や将棋などと同様、文化である。
文化は、その意義や理念を説く人が絶えた時、意味不明の不用物と見なされ、消滅の一途を辿る。
今後、草食系の若者は一層増えるに違いない。
団先生のご冥福は祈念して止まないが、返す返すも口惜しい。



一期は夢よ、ただ狂え
団 鬼六
マガジンハウス
2001-10-01






花と蛇 [DVD]
谷ナオミ
日活
2006-06-23


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杉本彩
東映
2004-06-21






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