【邦画】「男はつらいよ 第6作 純情篇」(1971)【観戦記】「第69期名人戦七番勝負〔第7局の2▲森内俊之九段△羽生善治名人〕2人の心境」上地隆蔵さん

2011年07月12日

【将棋】「Number2011年7月7日号/天才棋士の意外な集中法・調子の上がらぬ朝にこそすべきことがある」羽生善治さん

取材を申し込んだのはそんなときだ。
「カド番ではさすがに難しいでしょう」という他の棋士の意見はもっともだったが、羽生自らこの日の取材を提案してきてくれたのだ。
(中略)
5日後に控える第五局は不利な後手番で、真の大一番である。
プレッシャーのかかる時期に、羽生はなぜ、取材を受けてくれたのだろう。
(中略)
「タイトル戦といえども、極力普段通りに、普通に過ごしながらやっているということですね。
将棋の世界はオフシーズンがないので、他の相手も、出来る範囲でやりくりしながらやらざるを得ないですしね、ええ」。

ーー名人戦で3連敗。
どう心の整理を?
「そうですね・・・まあでも、カド番はよくあることなんです(笑)。追い詰められた状況では、やっぱり、120%の力を出したいと思うわけじゃないですか。うん・・・でも、基本的に、それは無理なんですよね」。

ーー無理・・・?
「ええ。
そういう時は、普通にやることすら難しいわけですよ。
自分が出せるものは決まっているから、今まで通り、対局に全力を尽くすしかない。
でも、ずっと同じ集中力、高いテンションを保つのは、難しいんです。
1年の中でも、1日の中でも、波がある。
気分の浮き沈みは人為的に変えられるものじゃないので、それに合わせてやっていく。
(以下省略)

ーーということは、心はコントロールできない、と?
「どうにもならないところもあるんじゃないんですかねぇ・・・。
でも、逆に1日中、ずっと調子が悪いということも少ないと思いますよ。
(中略)
・・・長く続けていたらそういうときもあるから、まあ、そのときはそのときでどう立て直せるか。
(以下省略)

楽しげに笑うと、問わず語り続けた。
「諦めることも大事だと思ってるんです。
つまり、沢山こなしていく場合には、当然、調子の悪い日もあるんだと思っていたほうがいいような気がしています。
完璧さを求めちゃうと、却って立ち直りが難しい。
高いテンションを保とうとすればするほど、逆に下がっちゃう。
一番は、無理をしない。
無理をすると必ず後で反動が来るので、自然に出来ることをする。
ただこれは、あくまで長いスパンでやる競技の考え方です。
それこそ、オリンピックは4年に一度の人生の大勝負なので、絶対に無理しないとダメでしょうけど(笑)」

ーー羽生さんは、勝っても負けても、反省したらすぐに忘れるそうですね。
「きちんと自分なりに検証するということが大事だと思うんですけど、何て言うんでしょうかね、屁理屈でも何でもいいから、自分の中で消化できれば忘れられるんじゃないですかね。
例えば、単についていなかったとか、あの審判が悪いとか・・・」

ーー人のせいでも?
「いやいや、それでもいいんですよ。
自分なりに納得すれば、次に向かっていける・・・。
理由は何でもいいんですよ(笑)」

緊急の事態、極限の事態にあるべき心境は、自然だ。
この場合の「自然」とは「平生」と言ってもいい。
「自然な心境」とは「平生」のそれであり、即ち、「いつもと同じような心境」ということだ。
私たちの多くは、このことを頭ではわかっている。
しかし、実際に緊急の事態、極限の事態に陥ると、「いつもと同じような心境」で居られない。
なぜか。
羽生善治さんのお話から伺えたのは、最初から無理だと諦めている、無意識に却下(キャンセル)しているからではないか、ということだ。
羽生さんは、名人戦のカド番時という正しく緊急の事態、極限の事態に、取材対応という「平生の振る舞い」を普通になさった。
羽生さんのように「平生の振る舞い」にいつもと同じように励むことこそ緊急の事態、極限の事態において「平生の心境」、「自然な心境」で居られる最も有効かつ自然な心得、活動なのかもしれない。

羽生さんが感想戦を他の棋士以上にしかと行われる一番の趣旨は次局に改良を加えることだと考えてきたが、そうではないのかもしれない。
一番の趣旨は本局をスッキリ忘れることなのかもしれない。
「敗因、悪手、緩手の原因を自分が納得できるまで見出すことで、本局のてん末に納得し、本局をスッキリ忘れる。
前局の消化不良こそ、『平生の振る舞い』、ひいては、『自然な心境』を阻む元凶になりかねない」。
羽生さんは、このようにお考えなのかもしれない。







kimio_memo at 07:39│Comments(0) 書籍 

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1. Numberの羽生さんの記事  [ 即席の足跡《CURIO DAYS》 ]   2011年07月12日 10:04
羽生さんの著書や記事について、今年だけでも下記3つ書きました。 大局観 40歳からの適応力 日刊スポーツの記事「仕事のヒント」 サッカーの長谷部の「心を整える」という本が売れてます。 心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣クリエーター情報なし幻冬舎...

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