2011年06月29日
【観戦記】「第69期名人戦七番勝負〔第6局の3▲羽生善治名人△森内俊之九段〕驚異的な早指し」椎名龍一さん
森内がほとんど時間を使わず、1日目から局面はどんどん進んでいく。
同一進行となっている第4局の下地があることは分かるが、それにしても速い。
昼食休憩があけるとすぐに仕掛けの局面になり、本日終了図まであっという間に進んだ。
この△5六歩が森内の用意していた作戦。
この手で第4局(△3五桂)に別れを告げた。
「第4局でこの手を指そうか迷っていたので、本局で採用しました」と森内は言う。
ここまで、森内の考慮時間はわずかに30分。
名人戦で30分しか使わずに66手目まで進めたのは、おそらく早指しの記録だろう。
羽生は3時間近く使っているが、ここでも腰を据えて長考に入った。
なんと、△5六歩は、第4局でも想定していた準備手だったと。
もちろん、自信は相当あったに違いないが、なぜ、相手をストレートでカド番に追い込んでいる第4局で、実戦例の少ないこの手ではなく、実戦例の多い△3五桂を選ばれたのか。
なぜ、負けたらタイに持ち込まれる本局で、この手を選ばれたのか。
森内俊之新名人に訊いてみたい。
トッププロの心情は、非常に興味深いが、凡人には推し量れなさ過ぎる。(涙)
★2011年6月29日付毎日新聞朝刊将棋欄
http://mainichi.jp/enta/shougi/