2011年06月28日
【観戦記】「第69期名人戦七番勝負〔第6局の2▲羽生善治名人△森内俊之九段〕強情ですね」椎名龍一さん
地元・山形県酒田市出身で大盤解説役として来ていた新鋭の阿部健治郎四段が「矢倉になると思います」と予想した通り、本局は3度目の矢倉戦になった。
これで今シリーズの偶数局(羽生先手、森内後手)はすべて矢倉戦。
両対局者は勝負師の気質通り、どちらも頑固でもある。
本局の駒組みは第4局をなぞるように進んでいるが、森内の指し手が異様なまでに速い。
対する羽生は一手一手に少考。
盤上を読んでいるというより、森内の自信度を肌で感じようとしているように思える。
(中略)
本日終了図の局面で羽生の考慮中に1日目の昼食休憩に入った。
くしくも第4局と同じ局面での休憩入りだが、森内の消費時間はここまでわずかに24分である。
「速いですね。不気味なくらいに・・・」という阿久津七段に、「森内さんも強情ですね」と立会人の島九段が応えた。
森内俊之九段(※当時)は、過日、理研脳科学総合研究センターのセミナーに出席なさった折、「自分は物事を合理的に考える性質なので、実戦例があり、想定手(指すべき手)がほぼ確定している既知局面では、長考したりしない。思考を極力省力化する」旨仰っていた。
たしかに、森内さんが昼食休憩まで僅か24分しか消費なさらなかったのは、このコメントのお考えに基づいてのことだろう。
しかし、基づいていたのは、このコメントのお考えだけではないだろう。
カド番に追い込まれても「なお」というか「やはり」鬼のように食い下がってくる羽生善治名人(※当時)に対し、「私はまだ余裕がありますから、貴兄のお手並みをしかと拝見しますよ」と応え、羽生さんに自分の(精神的)優位性や余裕を誇示したいお考えにも基づいていたのではないか。
もちろん、トップオブ勝負師であられる森内さんご本人は、全くの無意識であっただろうが。(笑)
藤井猛九段の名大盤解説と「棋は対話」の言葉を思い出した。
★2011年6月28日付毎日新聞朝刊将棋欄
http://mainichi.jp/enta/shougi/