2011年06月27日
【観戦記】「第69期名人戦七番勝負〔第6局の1▲羽生善治名人△森内俊之九段〕心の復興」椎名龍一さん
「来週からの名人戦を楽しみにしております」
東北地方に深い爪痕を残した東日本大震災から3ヶ月。
被災地を回っていた島朗九段が、津波で家を流されてしまったという将棋連盟気仙沼支部の支部長から聞いたのが冒頭の言葉だった。
「名人戦の勝負が、被災された将棋ファンの心の復興に少しでもお役に立てているのなら、本当にうれしいことだと思いました」と本局の立会も務める島九段は言う。
第6局は駒の産地で知られる山形県天童市。
温泉地の天道では被災者を受け入れ、福島県と宮城県から300人ほどが避難していたという。
前夜祭、羽生は「ここ天童には何十回来たか分かりません。カド番ではありますが、なじみのある場所で頑張りたい」と挨拶し、森内は「3連勝の後に2連敗し、5局目と6局目の対局場の方々から『来てくれてありがたかった』と言われて複雑な気持ちでいます」というおちゃめな挨拶で場を和ませた。
「来週からの名人戦を楽しみにしております」。
もし、私が気仙沼支部長さんなら、かくも言えなかったに違いない。
「『来てくれてありがたかった』と言われて複雑な気持ちでいます」。
もし、私が森内俊之名人なら、かくもおちゃめな挨拶はできなかったに違いない。
最上の将棋に人生を救われ、最上の将棋で人生を救う。
お二人の卓越した精神の逞しさと思いやりの深さに、心から敬意を表したい。(礼)
★2011年6月27日付毎日新聞朝刊将棋欄
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