【観戦記】「第69期名人戦七番勝負〔第5局の9▲森内俊之九段△羽生善治名人〕無機質な視線」甘竹潤ニさん【フジ】「ボクらの時代」西田敏行さん

2011年06月23日

【朝日新聞社】「第69期名人戦第七局▲森内俊之九段△羽生善治名人」木村一基八段

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経験上、タイトル戦で初戦から三連勝して角番に追い込むと、「相手はもう戦意を喪失しているに違いない」と想像してしまうものだが、そこで一局負けると、「相手はまだ狙っているのではないか」と思い、続いてもう一局負けると、「やっぱり(まだ狙っているの)か」と思い、さらに続いて(第六局を)負けると、かなりがっくりくる。

三勝三敗の第七局まで行くと、やはり対局者としては、主導権が得易い先手を取りたいもの。
だから、(先手/後手を決める)振駒をする人は、責任重大かつプレッシャーがかかる。
後手番になった対局者から「お前のせいだ!」と言われかねず、「(先後の決定は)対局者同士じゃんけんで決めて欲しい」ものだろう。(笑)

「横歩取り(※戦法の名称)」は難しい。
本局も途中までは昨年の(第68期名人戦の)羽生ー三浦戦と同じだが、昨年の考えや結論は、今や全く通用しない。
ニ、三ヶ月指していないと、実戦で使えなくなる。
難しいのは解説も同様で、「オレは知らない」と言って堂々と解説できるのは藤井猛九段くらいだ。(笑)

後手番の羽生(善治)名人が採用した4一玉型は、歩が足りなくなる変化があることから、最近は「後手がやりにくい」と指されなくなっている。
それは羽生名人も十分わかっているはずで、その上で今回指してきたのだから、きっと相応の準備があったのだろう。

人となりと棋風は反比例するもので、羽生さんの最近の棋風は「キツい」、「攻撃的」だ。
まあ、攻めた方が楽しいからわからないでもないが。
かくいう私も、かつて受けてばかりで生活している時期があったが、それって楽しくないのだ。(笑)
「この手は谷川(浩司)先生みたいな手ですね」と言われるようになりたい。(笑)

過去の対局をちゃんと覚えていてそれに改良を加えてくる。
だから、羽生名人は強い。

このようにタイトル戦を死に物狂いで指した対局者は、(より一層)強くなって帰ってくる。
これは、他の棋士との実力差が益々広がることと同義で、同業者(の私)としては嫌なものだ。(笑)

もし、羽生名人が本局を落としたら、(60手目)ここでなぜ△8五飛車を選んだのか、△3ニ飛車は考えなかったかと対局後間違いなく訊かれると思うが、その際に問題になるのは「(△3ニ飛車の可能性を)誰が言ったか(=主張したか)」。
言ったのが私だと、「ふーん」で終わりかねない。(笑)

今年は朝日杯で羽生名人に勝ち、優勝することができたが、羽生さんを負かせるとは思っていなかった。
あの時は、時間に追われ、余裕が無く、そんな中あっという間に逆転した。
朝日杯は元々持ち時間が短い棋戦で、(私のように)集中力が無い人にはいい。(笑)

羽生名人は、持ち時間の長い将棋でも、短い将棋でも、戦い方や作戦が特段変わらない。
いつも相手の弱い所を突いてくる。
ここぞと選択肢が沢山有る局面で手を渡してくる。
相手は驚き、手を間違ってしまう。
これが「羽生調」だ。(笑)
私はその被害者だからよくわかる。(笑)
(94手目の)△3三銀は、時間が無い中、思考を端折った手。
考えてない、「勘」で指した手で、紛れを無くしている。

観客の殆どが羽生さんのファンだった(※挙手にて判明)ことも手伝ってであろう、木村一基八段のネタの多くは羽生さんに関するものだったが、それは、羽生さんがそれだけ同業者(笑)、それもプロ中のプロから「ベンチーマーキング」に加え、「信頼」、「尊敬」されているということではないか。
プロ中のプロから「信頼」、「尊敬」されてやまない羽生さんの捲土重来を期待したい。



★2011年6月22日催行分
http://twitpic.com/5feqej
※1:解説女性棋士は中村桃子女流一級
※2:上記の木村八段の言はいずれも意訳
 

木村の矢倉 急戦・森下システム
木村 一基
マイナビ出版(日本将棋連盟発行)
2012-03-24




kimio_memo at 09:16│Comments(2) 将棋大盤解説会 

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先日の名人戦、最終局。 3連敗から3連勝というのは、タイトル戦で過去4回。 うち2回は、最初に3連勝した方が勝ち。 そして、残り2回は竜王戦と王位戦の3連敗4連勝の大逆転。 果たして今回はどちらのパターンなのか。 振り駒、森内九段先手で始まった注目の最終局。 そし...

この記事へのコメント

1. Posted by ふじえ   2011年06月23日 11:52
木村八段の大盤解説おもしろそうですね♪

2. Posted by 堀@感動人   2011年06月24日 06:27
ふじえさん

はい、おもしろかったです!
解説の面白さでは、木村八段は依然Aクラス入りなさっていると思います!(※嫌味ではありません)

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