2011年06月22日
【観戦記】「第69期名人戦七番勝負〔第5局の9▲森内俊之九段△羽生善治名人〕無機質な視線」甘竹潤ニさん
ヘエ~、ウーン・・・。
羽生の動きがますます大きくなった。
頭を抱えながらアーッとつぶやいたかと思えば、イヤッと小声で叫んだり。
声とともに表情まで豊かになっていくのだ。
終始、”静”を決め込む森内とはなにもかもが対照的だ。
ところが形勢は逆に森内にとって容易ならざるものになっていた。
銀桂交換の駒得ながら、先手は飛車が狭い。
次に△6四銀をみられて忙しい状況なのだ。
(森内が)▲7四歩と突く手はある。
(中略)
苦吟58分、森内は▲5五角。
この手を見て羽生が席を立つ。
やがて襖をあけて戻ってきた羽生はさっきまでの豊かな表情とは一変。
席に着くまで森内に対して無機質な視線を投げかけた。
自分に向けられた視線ではないのに、記者の背筋がゾクッとした。
(▲5五角の後の)△3三桂は昼食休憩をはさんで61分の長考。
ついで▲7四歩に△5六歩が絶妙のタイミングの利かし。
「形勢変化は一瞬であり、優勢(になりそうだ)と思しき時にこそ、次の一手を苦悩すべし」ということか。
「天才」の自覚のない天才の一挙手一投足には、翻訳機が必要だ。(笑)
★2011年6月22日付毎日新聞朝刊将棋欄
http://mainichi.jp/enta/shougi/