2011年06月09日
【毎日新聞社】「第69期名人戦第六局▲羽生善治名人△森内俊之九段」藤井猛九段

(三連勝で忽ち角番に持ち込んだものの二連敗し羽生善治名人に猛追されている今、)森内俊之九段が、羽生名人の初手▲7六歩に対して△8四歩と、後手で『受ける』形になり易い矢倉含みで受けたのは)ちょっと勝負に甘いのではないか。
△3四歩なら話は違うが、これだと「相手をねじ伏せる」といった感じではない。
(64手目の)△2五桂に▲同歩と指したところでは、先手は銀と桂がさばけ、先手が有利(とされている)。
ここまでの手順は、先手にとって都合の良い定跡(のようなもの)。
野球でも、2ストライクを取ると、次はボールを投げる。
初戦から三連勝し、その後ボールを投げるのはいい。
しかし、今この第六局でまたボールを投げるのは、「自信がある」、「自分の方が強い」ということか。
森内九段は、過去、この戦形の先手番をやっている。
それで、今回、後手としてこの先手番を受けているというのは、「自分も過去やってみたんですが、私は攻め切れなかった。羽生さんはどう指しますか?」ということか。
対局現場の雰囲気は、形勢が互角とか後手をひいていると、「羽生もち」になってしまう。
挑戦者としては辛い。
羽生名人に挑戦する時は、互角とか後手番にはなりたくない。
渡辺
森内九段は、20代の若い頃、持ち時間の残りが20、30分になると、わざと使い切って、一分将棋にしていた。
わざと「自分を追い込んでいた」のだ。
「一分将棋での精度が、羽生名人の方が上回っている」と感じてのことだそうだ。
森内九段は、初戦で三連勝した後、流している。(笑)
初戦から三局までの羽生名人は悪かった。
しかし、今は違う。
羽生名人は、悪くなっても、すぐ復活する。
羽生名人のスケジュールは、ここのところ非常にハードだ。
羽生名人は忙しい方がいいのかもしれない。(笑)
この対局の後は、明日移動して、明後日(10日)には棋聖戦で柏に入る。
11日は対局し、翌日(12日)には仙台で講演をし、その翌日(13日)には王位戦挑戦者決定戦で私と指す。(笑)
その時、羽生名人はさぞ疲れているだろうが、私としては喜んでいられない。(笑)
森内九段は、30秒将棋の時、29秒まで指さないことが多い。
「9」と読み上げられてから、全力で物凄い反射神経で指してくる。
「9」まで一向に指さず、「もう投了かな」と思ったりする(笑)ので、驚く。
しかも、そんな時に限って良い手だったりする。
私が読む手と羽生名人が実際に指す手が当ってくるようでは、森内九段はもうダメ(負け)。(笑)
本局は、森内九段の作戦負け。
(私の「羽生名人はなぜ強いのか?」の問いに)努力ですよ、努力。
我々(プロ)は、努力しているようでいて、そうでもない。(笑)
「将棋は会話(棋は対話)」と言われるが、藤井猛九段の解説はそれがとてもよくわかった。
さらに、藤井九段はA級在位が長いトッププロ棋士なので、トッププロ棋士が対局を通じて何を思い、何を考えているか、トッププロの心情や機微といったものがとても窺えた。
藤井九段は、将棋大好き少年のひろき君宛てに色紙を書いてくださった。
言葉は「心眼」。
とても合点がいった。
★2011年6月8日催行
※1:解説女性棋士は古河彩子女流二段
※2:上記の藤井九段の言はいずれも意訳
kimio_memo at 07:17│Comments(0)│
│将棋大盤解説会



