2014年04月
2014年04月30日
【邦画】「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」(2011)
〔ひと言感想〕
定年退職日の徹(演:三浦友和さん)のラストランに、先輩、後輩、裏方、顧客、家族がこぞって駅や線路沿いから手を振り、最敬礼していましたが、これは42年間鉄道運転士に徹した徹にとって、本望かつ人生最大の褒美だったに違いありません。
人の仕事と存在は、去り際や去った後必ず、その良否が明らかになります。
ともあれ、人にはそれぞれ、「人生を賭けたモノ」があります。
たしかに、それは異なる立場や背景の持ち主にはしばしば意味不明ですが、「相手を認める」とは、先ず相手のそれを否定せず、尊重することなのです。
そして、更には無二の一縁者として、可能な応援をすることなのです。
それを相手に伝えない愚と、相手のそれを頭ごなしに決め付ける愚と、いずれの方がより愚かかを討論する以上の愚は無いのです。
然るに、相手からの離婚届、或いは、絶縁状をイエローカードで終わらせるか、レッドカードに昇華させるかは、自分次第な訳です。
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定年退職日の徹(演:三浦友和さん)のラストランに、先輩、後輩、裏方、顧客、家族がこぞって駅や線路沿いから手を振り、最敬礼していましたが、これは42年間鉄道運転士に徹した徹にとって、本望かつ人生最大の褒美だったに違いありません。
人の仕事と存在は、去り際や去った後必ず、その良否が明らかになります。
ともあれ、人にはそれぞれ、「人生を賭けたモノ」があります。
たしかに、それは異なる立場や背景の持ち主にはしばしば意味不明ですが、「相手を認める」とは、先ず相手のそれを否定せず、尊重することなのです。
そして、更には無二の一縁者として、可能な応援をすることなのです。
それを相手に伝えない愚と、相手のそれを頭ごなしに決め付ける愚と、いずれの方がより愚かかを討論する以上の愚は無いのです。
然るに、相手からの離婚届、或いは、絶縁状をイエローカードで終わらせるか、レッドカードに昇華させるかは、自分次第な訳です。
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2014年04月28日
【NHK教育】「団塊スタイル/古きよき音楽を今に」細野晴臣さん
【国井雅比古アナ】
そして、(細野さんがテクノの)次(に手がけた音楽ジャンル)は「ワールドミュージック」っていうのは、まあ世界の各地にある、国境を越えちゃっているような、民族も超えちゃっているような音楽の中に、何か普遍的なモノっていうのかな、音楽性、これ、(この次に手がける)「アンビエント」もある意味で延長線にあるんでしょうか、環境的なっていう。
【細野晴臣さん】
そうですね。
決してバラバラじゃなくて、一つの大きな流れの中に「ワールドミュージック」とか「アンビエント」とか、そういうものが混在していたんです。
【国井アナ】
それは例えば、経済でも「グローバル」とか、まあ色んな、企業もどんどん超えていく何とか、そういう世の中の動きとある意味で連動していくようなものなんですか、ある意味見ている、その世界を?
【細野さん】
一歩先にやってたような気がしますね。
でも、よく分からないんです。
やっぱり、経済と音楽って密接ですから。
後で考えると、経済のバックアップがあったのかなとかね、思うんですよ。
流れにはやっぱりね、逆らえないです、世の中の経済とか。
そこから無縁では生きていけないので。
どうしても影響されるし。
これはもう、年齢ではなくて、生まれつきですね、多分。(笑)
「流されていく」っていうよりも、「流れていく」っていう感じですね。
受身じゃなくて、自ら流れていくっていう。
で、色んな計画立てたりすると、全部ダメなんで、もうそういうのやめて。
性格なんです、多分、だらしないっていう性格。(笑)
(中略)
【国井アナ】
そして、現在66才、まあ「原点回帰」と言いましょうか。
これは、何か思いがあるんですか?
【細野さん】
色んな思いがあるんですけど、20世紀の音楽、音楽だけじゃないですね、映画、音楽、文化、とても豊かじゃないですか。
終わっちゃったけど。
みんな、居ないんですよ、もう。
自分が大好きなシンガーとか、今居ないわけですから。
ビング・クロスビーとかね、フランク・シナトラとか。
その郷愁感っていうのは、すごいあるんですよね、実は。
ノスタルジーっていうのは。
でも、それ以上にやっぱり、その頃の音楽を聴くと、今はできないから、逆にできないモノに燃えるっていうのかね、やりたくなるわけ。
【国井アナ】
「できない」っていうのは、どういうことですか?
【細野さん】
それはね、その時代の、例えば、50年代の社会の空気とか、全部音に反映しているんですよね。
音って、マイクで拾うから、空気の音を見えない所まできっと拾っているんだと思うんですよ。
その響きが、今出せないんですよ。
【国井アナ】
それは、世の中と連動しているから?
【細野さん】
連動しているんです。
【国井アナ】
音楽だけ持ってくるっていうわけにいかないんだ。
【細野さん】
いかないんです。
だから、それをどういう風に今に生かすかっていうことが、自分のテーマっていうか、楽しみっていうか。
【国井アナ】
それは、そういう音楽を創ることによって、そういうすばらしい時代があって、すばらしい音楽があったってことを、今の時代、或いは、これからの若い人たちにも伝えていきたい、っていうこと(ですか)?
(それとも)伝えるとかではない?
【細野さん】
媒介ですね、たしかに。
過去から未来の中間に生きているわけで。
それをこう、自分の中にあるものをやっぱり出していかないと。
誰か聴けば、誰かしら受け取るし。
そういう何か、プロセスの間に居るっていう感覚はありますね。
伝えたいっていうよりも、そんな感覚ですね。
【国井アナ】
媒介なんだ、触媒とか。
【細野さん】
そうです。
僕は、そこにたまたま生まれて、触れてきたっていうだけであって、大きな文化の流れっていうのはもう、何だろう、それが今の地球を作っているわけですから、そこで生まれたわけですから。
具体的に言うと、例えば、自分で「あっ、こんないいリズムができた」と思う瞬間があるんですけど、大抵誰かしらが昔やってたんですね。
だから、いいものっていうのは、全部もう創られている、既に。
それを、遺伝子の中にそういうモノがあって、それを探って思い出していくと、共通の、何か昔の人がやってたことと繋がってくるっていう経験がありますね。
【国井アナ】
ということは、「オリジナリティ」とかよく言いますよね、作品の創造するとか、新しいモノ、そういうモノはある意味では無いと言っていいか、あるけども、それはもう・・・
【細野さん】
あるんですけど、そうです。
伝統というか、大きな文化のスタイルがありますけど、それも自分が参加して、そこに自分のサインを書く程度でいいんです。
なんかこう、印を付けるっていうか、僕はこうだった、こうやったよ、っていう。
それが、自分にとってのクリエイティブな作業です。
細野晴臣さんは、今から30年以上前、坂本龍一さんのデビューアルバムのライナーノーツに、「坂本さんが創った"The End Of Asia"のメロディはかつて自分も創ったことがあるが、これは『海の塩を取るようなもの』だ」と、私見と賛辞を寄せられた。
当時、私は中学生で、細野さんの考えを読み解くには若過ぎたが、今は凡そ理解できる。
そうなのだ。
社会という海の中では、音楽は一つの小波に過ぎず、また、人間の道理や物事の本質という塩は知れているのだ。
海に生を授かった私たちが人生で果たすべき大事は、塩をどう汲み取り、どう使い、どう後進に手渡すか、なのだ。
そして、本番組での細野さんのお考えも、凡そ理解できる。
そうなのだ。
真のクリエイティブ、創造とは、[0(無)]から優れた[1(有)]を生み出すことではないのだ。
優れた[1]は、既に先人が生み出しており、社会の伝統文化の中に、また、自分のDNAの中に、脈々と受け継がれているのだ。
真のクリエイティブ、創造とは、自分が無意識に継承している優れた[1]を、当代の空気と独自の試行で脚色し、後世へ確実に伝達することなのだ。
クリエイター、創造者とは、媒介者なのだ。
また、然るに、創造は「組み合わせ」でもあり、市川團十郎さん曰く、「創造と継続はそれ程変わらない」のだ。
当代に生きる私たちは皆、当代と次代を結ぶクリエイター、創造者であって然るべきだ。
私たちは、ナポリを見ずして死ねないように(笑)、独自のサインを覚えるまで死ねない。
★2013年12月27日放送分
http://www.nhk.or.jp/dankai/bangumi/num089/index.html
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2014年04月24日
【第72期名人戦/第二局】羽生挑戦者、踏み込むべきは踏み込み、再点検すべきは再点検し、開幕二連勝
[ひと言感想]
68手目、森内俊之名人の△4七馬との肉迫に、羽生善治挑戦者が▲5八金と守らず(→無用な安心願望を断絶し)、森内玉の急所の5三地点に▲5三銀成と踏み込み、逆肉薄したのは天晴のひと言でしたが、その後、森内玉を仕留める(83手目)▲6四飛の着手を急がず、予め十二分に脳内再点検したのは、山崎隆之八段の解説共々感心のひと言でした。
「得られる勝利を逃さない。得るべきプロセスを感情にまかせて端折らない」。
トッププロが勝利を多々得るのは、やはり然るべき訳がある訳です。
★2014年4月22、23日催行
http://mainichi.jp/feature/shougi/meijinsen/
http://mainichi.jp/feature/news/20140424k0000m040015000c.html
http://www.asahi.com/articles/ASG4R2RNMG4RUCVL00B.html
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68手目、森内俊之名人の△4七馬との肉迫に、羽生善治挑戦者が▲5八金と守らず(→無用な安心願望を断絶し)、森内玉の急所の5三地点に▲5三銀成と踏み込み、逆肉薄したのは天晴のひと言でしたが、その後、森内玉を仕留める(83手目)▲6四飛の着手を急がず、予め十二分に脳内再点検したのは、山崎隆之八段の解説共々感心のひと言でした。
「得られる勝利を逃さない。得るべきプロセスを感情にまかせて端折らない」。
トッププロが勝利を多々得るのは、やはり然るべき訳がある訳です。
★2014年4月22、23日催行
http://mainichi.jp/feature/shougi/meijinsen/
http://mainichi.jp/feature/news/20140424k0000m040015000c.html
http://www.asahi.com/articles/ASG4R2RNMG4RUCVL00B.html
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2014年04月23日
【洋画】「クレイジー・ハート/Crazy Heart」(2009)
〔ひと言感想〕
要するに、人生はスポットライトを浴びるよりドサ回りに追われるのが常だが、人は、死ぬまで前を向いて生きる以外無く、企業のリストラと同様、問題の元凶を自分に見出し、捨てるべきは捨て、捨てられるべきは捨てられ、然るべき対処を敢行、受容しなければいけない、と。
そして、何かを得ることは何かを失うことであり、何かを失うことは何かを得ることだ、と。
人が誰かを好きになるのは、他者に自分を再発見して前を向いて生き直す、然るべき生まれ変わりかもしれません。
要するに、人生はスポットライトを浴びるよりドサ回りに追われるのが常だが、人は、死ぬまで前を向いて生きる以外無く、企業のリストラと同様、問題の元凶を自分に見出し、捨てるべきは捨て、捨てられるべきは捨てられ、然るべき対処を敢行、受容しなければいけない、と。
そして、何かを得ることは何かを失うことであり、何かを失うことは何かを得ることだ、と。
人が誰かを好きになるのは、他者に自分を再発見して前を向いて生き直す、然るべき生まれ変わりかもしれません。
出演:ジェフ・ブリッジス、マギー・ジレンホール
監督:スコット・クーパー
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2018-12-05
2014年04月22日
2014年04月21日
【洋画】「レ・ミゼラブル/Les Misérables」(1957)
[ひと言感想]
「私は君の魂を買う」。
「不幸には同情、幸福には寛大」。
とりわけこの二言が心に刺さりました。
金銭が真に果たすべきは、人の尊厳と可能性の尊重なのでしょう。
然るに、司教は銀の食器だけでなく、母親の遺品の銀の燭台まで、ジャン・ヴァルジャンに恵んだのでしょう。
医者が診るべきは病気ではなく人であるのと同様、人が買うべきはモノではなく人に違いありません。
そして、真の不幸とは、努力と人知を超えた因果なのでしょう。
然るに、その悲惨さ、割り切れなさ、絶体絶命さにジャン・ヴァルジャンは同情し、売春婦に身を落としたファンティーヌと、囚われの身となったジャヴェールを助けたのでしょう。
不幸は、根絶できなくても、断絶できるに違いありません。
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「私は君の魂を買う」。
「不幸には同情、幸福には寛大」。
とりわけこの二言が心に刺さりました。
金銭が真に果たすべきは、人の尊厳と可能性の尊重なのでしょう。
然るに、司教は銀の食器だけでなく、母親の遺品の銀の燭台まで、ジャン・ヴァルジャンに恵んだのでしょう。
医者が診るべきは病気ではなく人であるのと同様、人が買うべきはモノではなく人に違いありません。
そして、真の不幸とは、努力と人知を超えた因果なのでしょう。
然るに、その悲惨さ、割り切れなさ、絶体絶命さにジャン・ヴァルジャンは同情し、売春婦に身を落としたファンティーヌと、囚われの身となったジャヴェールを助けたのでしょう。
不幸は、根絶できなくても、断絶できるに違いありません。
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2014年04月18日
【邦画】「男はつらいよ 第14作 寅次郎子守唄」(1974)
[ひと言感想]
幸福な人生とは、今際の際に致命的な後悔を覚えない人生です。
幸福な人生を迎えるには、たしかに寅の言う様に、玉砕覚悟で本心に従順になるのが有効かつ不可欠です。
そして、「当たって砕けろ」の本質は、致命的な後悔の回避です。
人生とは、絶えず諦めを積極的に重ね、後悔の根絶に腐心する道程かもしれません。
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幸福な人生とは、今際の際に致命的な後悔を覚えない人生です。
幸福な人生を迎えるには、たしかに寅の言う様に、玉砕覚悟で本心に従順になるのが有効かつ不可欠です。
そして、「当たって砕けろ」の本質は、致命的な後悔の回避です。
人生とは、絶えず諦めを積極的に重ね、後悔の根絶に腐心する道程かもしれません。
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2014年04月17日
【経営】「伝説の外資トップが明かす 勝ち残る人財の原理原則」新将命さん
P31
「グローバル」の定義なくして勝ち残ることはできない
(前略)
まず、「経営の原理原則」から話すことにする。企業が飛躍的に成長するためにグローバル化は必須であるといわれているが、そのために欠かすことのできない三つの条件がある。理念と目標と戦略である。方程式でいえば「理念+目標+戦略=方向性」だ。
自社が将来的にどのような会社になりたいのかというのが理念である。理念とは理想を念じるということである。将来のあらまほしき姿、英語でいえばビジョンがこれにあたる。
理念に基いて目標を作る。売り上げ目標、利益目標、シェア目標などの短中長期の目標である。
目標の次には戦略が続く。戦略を打ち立てる時、戦略の構築と遂行の前工程には理念と目標がなければならない。単純化していえば、理念とは「どうなりたいか」ということ、目標とは「何を成し遂げるか」であり、戦略は「何を行うか」ということである。
したがって企業のグローバル化を推進するためにはまず理念と目標を作り、そのための戦略を戦術に落とし込んで実行することによって、はじめてグローバル化は可能となる。ただ単に「グローバル化」、「グローバル化」と呪文のように唱えているだけでは何も変わらない。
P150
自分の「USP(ユニーク・セリング・プロポジション)」は何か
(前略)
一言でいうと、USPとは「私の売り」であり、「私の差別化」である。
一度自分にUSPがあるか、もしあるとすればそれは何なのか、もしUSPがないのならば、どんなUSPを身につけたいか。それを総論ではなく「自分」という各論に落とし込んでみてはどうだろう。USPをつくり上げたら、次は自分が身に付けたUSPを相手にアピールできるようにならなければいけない。
(中略)
私もそうだが、おろらくあなたも自分の運命は自分で支配したい、人の奴隷になりたくはないと思っているはずだ。ならば自分がどうなればいいのか、なりたい姿をしっかりと思い描くべきだ。
こうなりたいと思い描いた自分は「To Be」、そして今の自分は「As Is」。この二つの間には乖離がある。「ありたい姿」と「ある姿」の間のギャップである。このギャップを埋める作業のことを日本語では自己啓発という。グローバルリーダーになった人は日々の自己啓発を怠っていない。目に見えるところ、目に見えないところで自己研鑚を積んでいる。日進月歩の継続的努力の結果としてグローバルリーダーになるためには、何よりUSPを身につけて、自分のビジネスパーソンとしての市場価値を高めていかなければいけない。価値のない人は勝ち組にはなり得ない。
なぜ、自己啓発は凡そ不毛かつ徒労に終わるのか。
新将命さんのお考えは尤もだ。
そう、理念や目標が無いからだ。
USP(unique selling proposition)を身に付けた「ありたい自分」が無いまま、また、そんな唯一無二の「ありたい自分」に成るための定量的、定性的な進捗目標が無いまま、ただ自己啓発に励んでも、それは、打倒すべきライバル、目標のハンディキャップ、彼方のグリーンのピンを具体的に見定めることなく、ひたすらゴルフ練習場に通い詰めるのと同様、不毛かつ徒労に終わるに違いないのだ。
理念や目標の無い自己啓発は、詰まる所「自分探し」や自己満足だ。
それらは完全否定すべきものではないが、見定めの無い手段に励むには、人生は余りにも短い。
2014年04月16日
2014年04月15日
【毎日】「新たな『伝説の戦い』に」大崎善生さん
(前略)
今年の名人戦第1局も8日に開幕した。ともに永世名人の資格を持つ森内俊之名人に羽生善治王位が挑むという、またとない組み合わせで、これが4年連続の対決となる。しかも驚いたことにこれが2人で戦う9度目の名人戦だという。その数字の意味は重く、伝統のライバルといわれた大山康晴十五世名人と升田幸三実力制第四代名人が戦った9回の記録に並んだことになる。
■
大山対升田という永遠のライバル。
その伝説の戦いに今回の名人を争う2人が肩を並べかけたのだ。
羽生は不可能といわれていた7冠制覇を成し遂げた天才棋士であり、生涯勝率も7割2分を超え、タイトル獲得数も含めありとあらゆるレコードをいまだに塗り替え続けている圧倒的な存在である。その数字や実績が残したものだけではなく、羽生の凄さはそれまでに100年以上もの常識として確立されていたことを次々と解体し洗い直していこうとしたことだ。その結果、将棋の定跡は壊され、新しい価値観が開発されていった。常識という先入観を徹底的に洗い直そうとしたわけで、その作業は今も将棋界で現在進行形である。
羽生の将棋には何かを変えていこうとする意思がある。言葉がある。そしてときとしてそれが旋律のように聞こえてくる。それがファンを心酔させずにおかない魅力である。羽生の将棋を見ていると、自分に問いかけてくる言葉が聞こえるように思えて背筋が寒くなるようなことが、まれにある。
一方の森内は何も語らない。寡黙なまま庭に落ちた実を丁寧に拾い集めていく。無駄なことはなるべくしない。しかし不思議なことに、そうすることで圧倒的な天才肌の羽生に十分対抗しうる力を身につけている。その結果が名人戦の記録に如実に表れている。久しぶりに見る対局姿には、名人らしい風格を感じた。
■
思えば升田と大山もよく似ていた。
新手一生を標榜する升田は、次々と常識を疑い新しい定跡を作りそれを引っさげて、名人戦という最高の舞台で大山に挑んだ。大山はただ実直に、おそらく将棋界歴代最高とも思える演算力を駆使して升田の出す問題に答えていった。升田の構想、理論にひとつひとつ解答を出し続けたのだ。
コンピューターが間違いなく人間に迫っている。それは将棋のプロや関係者ならずともファンの目にも明らかなことである。自分が将棋界に足を踏み入れてまさかこんなことが現実に起こるとは思ってもみなかった。
升田と大山。
2人の天才が、争ったその本質はいったいなんだったのだろう。升田は新手という難問をつきつけどんな解答を引っ張り出そうとしたのだろう。
時代を超えて今、同じく9度目の対戦を迎えて森内と羽生は同じことを問われているように思えてならない。
将棋はいつも迷っている。どこにいくのか、何のために勝つのか、何をどうやって誰のために表現するのか。厳しいけれど名人戦には、いつもその解答が求められている。だからこそ将棋ファンは誰もが注目するのだ。
赤フォントした二箇所に、強く共感した。
そう、リーダーやヒーローと称される人は凡そ改革者だが、人が彼らに真に惹かれるのは、彼らの未知かつ破壊的なパフォーマンスや実績ではなく、それらに通底する有形無形のメッセージだ。
その中に在る、巧みに言語化された高い普遍性(本質を正確かつ広範に押さえていること)と独自の志に心を鷲掴みにされた時、人は彼らをリーダーやヒーローと称えるのだ。
いずれの社会も、時と共に現状維持が自己目的化する。
リーダーやヒーローは、そんな硬直かつ閉塞した社会の産物であり、要請であり、希望だ。
人は、改革者として彼らに惹かれているのはではなく、説得的かつ粋なビジョンの語り部として彼らに惹かれているのであり、もっと言えば、彼らに惹かれているのはではなく、実績と本質と志に確然と裏打ちされた彼らの言葉に酔いしれているのだ。
そう、娯楽は「不可能」と「絶望」からの解放を主眼とし、人生に通底しているが、中でも将棋は、「絶えず考え、迷いながらも、自分という羅針盤を頼りに答えを捻り出し、前へ突き進む以外無い」点で、甚だ人生に通底している。
将棋は、もはや娯楽を超えた人生の縮図、抽象であり、知れば知るほど救われる所が多い。
将棋ファンがタイトル戦を頂点とするトッププロの対局に求める最たるは、名局ではなく、最上の救いではないか。
★20014年4月10日付毎日新聞夕刊四面から転載
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2014年04月14日
2014年04月11日
2014年04月10日
【第72期名人戦/第一局】羽生挑戦者、二枚角の攻めを繋げ切り、力将棋の緒戦を制す
[ひと言感想]
羽生善治挑戦者が序盤早々に飛車と交換した角は、二枚角として最後まで、森内(俊之名人)玉の隙と反攻を牽制し続けました。
不肖私、「序盤は飛車より角」の格言がいかに妥当か、そして、ビジネスにおいても「人、物、金、知恵、情熱」の各々がフェーズ毎にいかに重要度が違うか、改めて気づかされました。
★2014年4月8、9日催行
http://mainichi.jp/feature/shougi/meijinsen/
http://mainichi.jp/feature/news/20140410k0000m040102000c.html
http://www.asahi.com/articles/ASG492Q6FG49UCVL007.html
羽生善治挑戦者が序盤早々に飛車と交換した角は、二枚角として最後まで、森内(俊之名人)玉の隙と反攻を牽制し続けました。
不肖私、「序盤は飛車より角」の格言がいかに妥当か、そして、ビジネスにおいても「人、物、金、知恵、情熱」の各々がフェーズ毎にいかに重要度が違うか、改めて気づかされました。
★2014年4月8、9日催行
http://mainichi.jp/feature/shougi/meijinsen/
http://mainichi.jp/feature/news/20140410k0000m040102000c.html
http://www.asahi.com/articles/ASG492Q6FG49UCVL007.html
2014年04月09日
【サーカス】「オーヴォ/ovo」シルク・ドゥ・ソレイユ
[ひと言感想]
やはり、人間の思考と能力は無限大です。
そして、人間の大敵は「不可能」と「絶望」です。
娯楽の主眼は、人間を「不可能」と「絶望」から解放することです。
★2014年4月8日上演分
http://www.fujitv.co.jp/events/ovo/index.html
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やはり、人間の思考と能力は無限大です。
そして、人間の大敵は「不可能」と「絶望」です。
娯楽の主眼は、人間を「不可能」と「絶望」から解放することです。
★2014年4月8日上演分
http://www.fujitv.co.jp/events/ovo/index.html
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2014年04月08日
【BSTBS】「SONG TO SOUL 永遠の一曲」Marvin Gaye”What's Going On”〔解説〕久保田利伸さん
Marvin Gayeの魅力に僕、二面在ると思っていて、一つが、何て言うんでしょうね、「色気」ですよね。
曲と一体になった時の色気、声の持つ色気、音楽にどんどん色味を足して行く意味の色気。
その一番最たるものが、"I want you"の曲であったり、そのアルバムに入っているものであったりするんですけども。
で、もう一つの面が、Marvin Gayeの社会的なメッセージを強く持った部分。
それが、”What's Going On”に代表されるものなような気がします。
多分、Marvin Gayeが本当にMarvin Gayeという所以、その理由っていうのは、ここまでMarvin Gayeが唯一無二の存在になっているというのは、その二面性が在ったから。
(つまり、)Marvin Gayeの持つセクシイネスの方がすごく極端に好きな人と、また、もう一つの社会的なメッセージを内に秘めた部分っていうのがすごく好きな人と二つ在って、で、それがやっぱり人種を飛び越えて、時代を飛び越えて、色んな人の耳に届いてるんだと思いますけどね。
久保田利伸さんのこのマーヴィン・ゲイ評は、以下換言でき、成る程だ。
「世の多くの人がMarvin Gayeに魅かれたのは、彼が官能を神的に刺激し、かつ、世の矛盾とあるべき姿を一般人、隣人目線で代弁、提唱してくれたからだ」。
この換言から言えることは、最低二つある。
一つは、「価値の総和は、各源泉の足し算ではなく、掛け算で算出される」、ということ。
そして、もう一つは、「大衆の支持を得るには、専門を極める(←独自技術を会得する)ことに加え、専門バカではなく町の哲学者になる」、ということだ。
80期を超えるタイトルを獲得(棋戦優勝を経験)し、かつ、その軌跡で会得した普遍の真理を書籍や講演で非将棋ファンにも分かり易く説く羽生善治さんも、道理で将棋ファンだけでなく、大衆から愛される訳だ。
★2014年4月3日放送分
http://www.bs-tbs.co.jp/songtosoul/onair/onair_11.html
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2014年04月04日
2014年04月03日
【洋画】「AVP2 エイリアンズVS.プレデター/Aliens vs. Predator: Requiem」(2007)
〔ひと言感想〕
要するに、井上陽水さんの「氷の世界」ではありませんが(笑)、人は、人を傷つけたいのでしょう。
そして、人が果てるさまを、安全な場所から見届けたいのでしょう。
真に最凶最悪な生物は、人なのでしょう。
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要するに、井上陽水さんの「氷の世界」ではありませんが(笑)、人は、人を傷つけたいのでしょう。
そして、人が果てるさまを、安全な場所から見届けたいのでしょう。
真に最凶最悪な生物は、人なのでしょう。
出演:スティーブン・パスカル
監督:グレッグ・ストラウス、コリン・ストラウス
監督:グレッグ・ストラウス、コリン・ストラウス
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2018-08-17
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2014年04月02日
【観戦記】「第72期名人戦A級順位戦〔第42局の11▲三浦弘行九段△久保利明九段〕精魂尽き果てて」上地隆蔵さん
三浦が入玉し、勝利は決定的になった。驚異的な延命を見せていた久保も、さすがに万策尽き、▲1八歩でついに駒を投じた。
終局午前2時、総手数271手。対局開始から17時間に及ぶ死闘だった。三浦が疲労困憊の様子で、途中からかけていた眼鏡を外した。久保が高揚した気を静めるように、軽く水を口に含んだ。
「失礼しました・・・」
三浦が小声でポツリとつぶやく。勝つべくして勝たず、無為に手数をのばしてしまったことへの詫びに思えた。
「失礼しました」。
17時間に及ぶ死闘をようやく制し、押し寄せる疲労に耐えながらの三浦弘行九段のこの発言には、感心感動以外無い。
当時、三浦さんの心を埋め尽くしたのは、最終局の勝利の喜びではなく、勝利のプロセスの無念に違いない。
プロフェッショナルの極みのA級棋士として、とうに勝利していたはずの勝利をかくも長引かせてしまった自分、最適化できて然るべき勝利のプロセスを最適化できなかった自分の無様さ、不甲斐なさ、情けなさをしかと肯定、受容し、その責を果たす当座の一歩が、対局者の久保利明九段に対して、周囲の関係スタッフに対して、そして、自分に対して向けたこの発言だったに違いない。
後悔を最小化する生き方を貫徹し、棋士として、また、一人の人間として「できること」と「やるべきこと」に絶えず純粋な三浦さんのこと、私はこう信じて止まない。
更に、三浦さんは、本局の感想戦を久保さんと一時間以上行ったばかりか、その後、同日に行われた他のA級全最終局を、結果を事前に聞かず、盤に並べて確認されたという。
私は、三浦さんを敬愛して止まない。(敬礼)
★2014年4月2日付毎日新聞朝刊将棋欄
http://mainichi.jp/shimen/news/m20140402ddm010040026000c.html
http://mainichi.jp/feature/shougi/
2014年04月01日
【洋画】「パブリック・エネミーズ/Public Enemies」(2009)
〔ひと言感想〕
成る程、デリンジャー(演::ジョニー・デップさん)の様に、仲間を決して見殺しにしない、見捨てない人は、四面楚歌の絶体絶命下に置かれても、今の自分も最後まで見捨てず、向かうべき所に向かい続けるのでしょう。
そして、その潔さに、人や仲間は惚れ込み、敵対者や競合者は妬みを募らせるのでしょう。
美人を真に落とすのは、言葉より生き様な訳です。(笑)
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成る程、デリンジャー(演::ジョニー・デップさん)の様に、仲間を決して見殺しにしない、見捨てない人は、四面楚歌の絶体絶命下に置かれても、今の自分も最後まで見捨てず、向かうべき所に向かい続けるのでしょう。
そして、その潔さに、人や仲間は惚れ込み、敵対者や競合者は妬みを募らせるのでしょう。
美人を真に落とすのは、言葉より生き様な訳です。(笑)
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